日本大百科全書(ニッポニカ) 「菊鹿盆地」の意味・わかりやすい解説
菊鹿盆地
きくかぼんち
熊本県北部、菊池川(きくちがわ)中流域に位置する盆地。面積約72平方キロメートル。菊池盆地ともいう。東を迫間(はざま)丘陵(阿蘇(あそ)溶結凝灰岩)、西を関町丘陵(中生代花崗(かこう)岩類)、北を筑肥(ちくひ)山地、南を肥後台地(段丘礫(れき)層)に囲まれたこの盆地は、穀倉地帯で、産米は質よく、菊池米として有名である。また、数多く残る装飾古墳や条里の遺構などは、開発の古さを示している。稲作に養蚕、育牛を加えた経営がこの地域の農業の伝統的な姿であったが、昭和40年代前半以降、施設園芸(果菜、花卉(かき))、大規模畜産(乳牛、鶏)を試みるものも多く、農業所得形成の主力になっている市町村もある。盆地東端の菊池市街地、西端の山鹿(やまが)市街地は、いずれも江戸時代には在町(ざいまち)として機能し、今日同様、商圏だけでなく、行政においても盆地内を二分してきた。菊池神社(菊池市)の例祭で奉納される松囃子能(まつばやしのう)と大宮神社(山鹿市)例祭での灯籠踊(とうろうおどり)は、菊鹿盆地の観光資源の一つとなっている。
[山口守人]