葛生動物群(読み)くずうどうぶつぐん

改訂新版 世界大百科事典 「葛生動物群」の意味・わかりやすい解説

葛生動物群 (くずうどうぶつぐん)

栃木県佐野市の旧葛生町付近の石灰岩割れ目の堆積物に含まれる化石脊椎動物群の総称で,地質時代では第四紀更新世にあたる。鹿間時夫によれば,上,中,下の3層準のものに区分される(1949)。上部は,シカマトガリネズミ,ニホンモグラジネズミ,タイリクヤチネズミ,タイリクハタネズミ,タナカグマ,ヒョウ,トラ,ヤベオオツノシカ,ナウマンゾウなど35属58種,その50%が絶滅種である。同様な化石動物群は,静岡県浜松市に含まれる旧浜北市の白岩や旧三ヶ日町の只木,青森県の尻屋崎,愛知県豊橋市北東の牛川,山口県の伊佐など,石灰岩地帯の割れ目の堆積物から知られている。3万2000年前より古く,更新世後期の最終間氷期から最終氷期初頭のものとされる。中部とされるものは,現在,石垣島,西表(いりおもて)島に生息しているセマルハコガメ近縁な化石ガメのミヤタハコガメなどを特徴種とする脊椎動物群で,温暖期のものとされるが,時代はあきらかでない。下部のものは,トウヨウゾウ,ニホンムカシジカ,シナサイ,ヨウシ(楊氏)トラ,ライデッカーイノシシなどで,更新世中期に中国南部に分布していた動物相万県動物相)と共通なものが多い。1950年に発見され,52年に直良信夫により葛生人とされた一群の化石人骨は上に述べた動物群のいずれに含まれるかはあきらかでない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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