狂言の曲名。大名狂言。相撲が武士のたしなみであり、社交に欠かせなかった時代、大名(シテ)は相撲取りを抱えようと、太郎冠者(かじゃ)に命じて街道から相撲自慢を連れてこさせる。さっそく腕試しと相撲に及ぶが、大名は相手に触るか触らないかのうちに目をまわして倒れてしまう。相撲取りの出身地が江州守山、蚊の名所と聞いて蚊の精(嘘吹(うそふき)の面を使用)だと気づき、行司の太郎冠者に扇であおがせ、風にふらふらする蚊の精を打ち負かす。和泉(いずみ)流では、大名自身が大団扇(おおうちわ)であおぎ、おもしろがっているすきに逆に蚊の精に負かされ、その腹いせに太郎冠者を打ち倒す。相撲は、農耕神事からおこり、宮廷儀式の時代を経て、中世に入り尚武の手段となり、やがて大衆娯楽の側面をもつようになるが、その過渡期の断面を愉快に描く。
[油谷光雄]
…フランス語ではうるさく,しつこい人物を指すこともあり,英語では小型の飛行機や舟,ボクシングの最軽量級など,軽快で小さいものをモスキートと形容する。なお,日本には狂言に《蚊相撲》という作品がある。太郎冠者に連れられて,新参の家来となった江州守山の蚊の精である若者が,大名と相撲をとるというもので,擬人化された蚊が登場する珍しい曲目として知られている。…
※「蚊相撲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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