社交(読み)シャコウ

デジタル大辞泉 「社交」の意味・読み・例文・類語

しゃ‐こう〔‐カウ〕【社交】

人と人とのつきあい。世間での交際。「社交のうまい人」「社交場」
[類語]付き合い交わり人付き合い交際交友行き来旧交国交国際触れ合い交流交遊友好親交交歓交誼交情厚誼高誼よしみ懇親接触コンタクト友情友愛友誼親睦深交昵懇懇意

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精選版 日本国語大辞典 「社交」の意味・読み・例文・類語

しゃ‐こう‥カウ【社交】

  1. 〘 名詞 〙 人と人とのつきあい。社会での交際。世間のつきあい。
    1. [初出の実例]「人間社交の道は、一村落なり一州県なり一邦国なり」(出典:明六雑誌‐四二号(1875)人生三宝説〈西周〉)
    2. 「社交(シャカウ)になれた主人の」(出典:門(1910)〈夏目漱石〉二二)

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改訂新版 世界大百科事典 「社交」の意味・わかりやすい解説

社交 (しゃこう)

文字どおりには,人と人とのつきあい,社会での交際,世間のつきあいを意味するが,社会学的な観点からは,社会を成り立たせる原点としてとらえられる。たとえば,社会学者のG.ジンメルは,諸個人間の相互作用によって集団や社会が生成される過程,すなわち社会形成過程(社会化Vergesellschaftung)に関して,その形式における純粋型を想定し,それに〈社交性Geselligkeit〉という概念を当てた。またG.ギュルビッチは,社会的現実を構成する要素として,〈社交性sociabilité〉,すなわち社会的交渉形態を考えた。社交とは,社会を成り立たせる必須の要因であるが,必ずしも実利的な目標が追求されるわけでもなければ,またゆゆしき問題として事が始められるわけでもない。

 このように社交によって社会が成り立ち,それを求める欲求はだれにでもあるのである。この点に関して心理人類学者のF.L.K.シュー(許烺光)は,社交を,地位・安全と並ぶ人間の基礎的な社会的欲求だとする。彼によれば,地位statusは,自分の所属する集団での評価のあらわれであって,仲間うちでどの程度重要視されているかを示す尺度である。安全securityは,仲間との紐帯(ちゆうたい)を確信することであり,その同類意識に基づいて相互に援助しあうことになる。これらを求める基礎には社交sociabilityの欲求がある。それは,仲間といっしょにいることを享受したいという気持ちであって,他の人々との接触を求め,その人との友情・つきあいを保っていこうとする種々の行動となってあらわれる。たとえば,社交パーティ,来客のもてなし,祭りなどのイベント,異性との交際や結婚,一家でのだんらんや親類づきあいなどは,すべて社交欲求によるものである。

日本で社交といえば,明治期の鹿鳴館でのような上流階層の華やかな交際の場がイメージとして浮かび上がる。しかし,社交はもっと庶民的・日常的なものである。古来日本人は,季節の移り変りに応じて家族や親しい仲間とそろって物見遊山に出かけることが多かった。花見,月見,雪見,山遊び,磯遊び,社寺参詣と称して,名所旧跡などで一行が車座になり,ご馳走をひろげ酒をくみかわし,余興にふけったりして一日を楽しく過ごすのである。現代でもこうした行楽的な宴はさまざまな集団でよく行われる。

 社交がどのような形でなされるかに関しては,文化によってかなり大きな違いがある。たとえば,アメリカの社交クラブの会合では,集まった人たちは,始まるまで控えの間でカクテルを手にしながら,友人などに紹介してもらって1人でも多くの人と知合いになろうと努めるのが普通である。日本では,そんなとき,互いに顔見知りの者ばかりが固まって世間話をするのが通例であり,相互の紹介などに力を入れることはない。このことは,個人主義欧米では,積極的な関係づくりが社会生活にとって不可欠であるのに対して,日本的集団主義の下では,既存の間柄の維持・存続のほうが,社交の基本目的になることを示唆している。日本で社交としての贈答(中元・歳暮)が盛んなのも,このためである。

 日本人の社交の特色がもっとも典型的な形で現れるのは,会社などでの宴会である。そこでの宴会は,集団,組織が機能するうえで不可欠なものである。しゃにむに仕事ばかりやり続けても集団,組織の能率があがるわけではなく,ときには仕事を休んで,その成員がそろってリクリエーション活動を行わなければ,集団,組織そのものが瓦解するおそれがある。そこで会社の社員旅行や宴会が,集団,組織を維持・存続させるうえで必要不可欠な行事として要請されるのである。宴会をそうした機能の発現形態として理解する必要があろう。忘年会,新年会,歓迎会,送別会などは組織活動の一部としてなされ,社員は全員参加を余儀なくされる。そこでは型どおりの挨拶に始まり,作法にのっとった飲食献盃がなされ,座が興ずるにつれて普段の上下の序列はなくなり,部下たちも平気で上司にからんだり,同僚の悪口を言う。そこでは酔いつぶれるまで飲むことが奨励される。このような宴会の形式は,欧米におけるパーティとは大いに様相を異にする。欧米では知らない者どうしが知りあうための社交のチャンスとして参加するから,酔っぱらうことがあってはならないと考えられているし,またそうした場で酔っぱらえば社会人としては失格とされる。この点,日本では酒の席のこととして大目に見られる。欧米でのパーティがいわば慇懃(いんぎん)講に終始するのに対し,日本の宴会の多くが儀式ばって始まっても無礼講に終わるのは,集団とともに生きようとする日本人にとっては,そのほうが自然だと感じられているからである。酔いとともに露呈される本音や願望を相互に知りあってこそ,安心してつきあえるのである。個人主義の強い欧米社会では,自分しか頼れるものはいないとされており,いきおい自己防衛的になる。宴席での酔いなど,もってのほかなのである。
宴会 →贈物 →パーティ
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