日本大百科全書(ニッポニカ) 「蝋板本」の意味・わかりやすい解説
蝋板本
ろうばんぼん
木や象牙(ぞうげ)でつくった小さな板の表面に蝋をかぶせ、スタイルスstylusのような、棒状の筆記用具で蝋をひっかいて書く書写材。ローマ人の発明したこの書写材は、ノートやメモ帳として18世紀末までヨーロッパで使われた。板は一枚だけのこともあるが、二枚、三枚と重ねて綴(と)じられることもある。前者をジプチカdiptych、後者をトリプチカtriptych、そしてたくさん綴じたのをポリプチカpolyptychという。二枚以上のときは板の端が蝶番(ちょうつがい)や紐(ひも)で綴じられていた。これが冊子体codex(すなわち、現在のような形の本)の原型なのである。
[高野 彰]
『高野彰「形態からみた本の歴史」(『論集・図書館学研究の歩み 第5集 図書館資料の保存とその対策』所収・1985・日外アソシエーツ)』▽『F・G・ケニオン著、高津春繁訳『古代の書物』(岩波新書)』