…時期的に古く知られたカタツムリの語が,現代では京都になくて山間部や日本列島の東西の端に近く残り,京阪地方や平たん部など交通が便で文化が交流しやすい土地では,新しい造語とみられるデンデンムシやマイマイが広い範囲を占めている。この方言分布からその新旧の変遷過程が,文化発展の中心から周辺へという存在形態として現れるとする〈方言周圏論〉が,このカタツムリ方言を主材料とした柳田国男の《蝸牛考》に説かれ,言語史研究上の一方法とされることとなった。この方法は童詞のような新語を採用しやすい方言の変遷に有効といえる。…
…口語法の調査の結果である《口語法調査報告書・口語法分布図》(1906)によって,親不知(おやしらず)と浜名湖を結ぶ線で日本の方言が東西に分かれることがわかった。ついで,柳田国男はカタツムリの俚言(りげん)の地理的分布調査から方言周圏論を唱えて《蝸牛考(かぎゆうこう)》(1930)を著し,戦後になって国立国語研究所から《日本言語地図》6巻(1967‐75)が刊行されて,日本の言語地理学の実質的基礎ができた。方言【柴田 武】。…
…1930年代の後半に至って,アクセントの研究が画期的な飛躍をとげた。また,そのころ,柳田国男の《蝸牛考(かぎゆうこう)》が成書として世に送られ,その方言周圏論が学界の関心を集めた。やや遅れて,フランスの言語地理学が紹介された。…
※「蝸牛考」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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