改訂新版 世界大百科事典 「ケントゥリア」の意味・わかりやすい解説
ケントゥリア
centuria
古代ローマで200ユゲラ(約50ha)の土地,また軍団や民会の基本単位をいう。ケントゥムcentum(100)に由来し,前者はヘレディウム(2ユゲラの世襲地)の100倍,後者は百人隊が原義。歴史上重要なのはセルウィウス・トゥリウス王の創始というケントゥリア組織で,財産を基準に市民をクラシスに格付けて軍務を課し,さらにケントゥリアに所属させた。構成は騎兵が18,歩兵の5クラシスが80,20,20,20,30,貧困市民が1,らっぱ手と工匠が各2で,計193ケントゥリア。これがそのまま民会の基本単位で,各市民の投票はケントゥリアごとの賛否,全193票に数えた。決議に要する過半数は,騎兵と第1クラシスの計98票が制し,軍務の重い有産市民がケントゥリア民会所管のコンスル選挙,立法,宣戦等,最重要国事を左右した。前3世紀末,ローマ領域が拡大して35トリブスに達した時,5クラシスは各70ケントゥリアに改組された。ただし民会では第2~第5クラシスのケントゥリアを臨時の投票集団100に統合し,これと第1クラシス,騎兵その他とで古来の総数193を保ち,有産市民の優位を守った。この制度はローマの海外征服の生む諸問題に対処しえず,帝政期に元首の強権の前に形骸化し,わずかに穀物分配に痕跡を残した。なお軍団のケントゥリアとその長ケントゥリオは帝政下にも長く実戦の基礎単位をなし,特に最古参ケントゥリオは軍団の実戦指揮者で,後に将校に叙せられた。
執筆者:鈴木 一州
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報