西部物(読み)せいぶもの(英語表記)western

翻訳|western

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「西部物」の意味・わかりやすい解説

西部物
せいぶもの
western

アメリカ独特の様式化された大衆文学の一ジャンル。神話的な美と約束の地「西部」を舞台に,邪悪なものからその価値を守るという,英雄叙事詩的な定型をもつ。ごく通俗的なものから芸術性の高いものまでがある。 19世紀中葉の大衆雑誌や廉価本が好んで扱った猟師や開拓民やガンマンなどの実話に由来しているが,この種の実話には伝説的な辺境開拓者などの冒険物語も語られ,西部物語はアメリカのフロンティア精神の一表現であった。 N.バントラインが先駆とされ,O.ウィスターの『バージニア人』 (1902) で初めて文学的評価の対象となったといわれる。しかし文学史的にみれば,J.F.クーパーによる一連の「革脚絆物語」がすでに西部物の基礎を築いていたということができ,以後マーク・トウェーン,B.ハートなどの芸術的な流れと,Z.グレーを代表とする通俗的な流れの2派が生じたといえる。 1952年に「アメリカ西部作家協会」が発足,53年アーネスト・ヘイコックス賞が設立されて,西部小説の質的向上がはかられている。 (→西部劇 )

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