化学辞典 第2版 「解離共鳴電子捕獲」の解説
解離共鳴電子捕獲(付着)
カイリキョウメイデンシホカクフチャク
dissociative resonance electron capture(attachment)
分子に低エネルギー(0~15 eV)電子を衝撃すると,狭い電子エネルギー幅で電子が捕獲され,複合負イオン状態となり,引き続いて短時間(10-15~10-6 s)で解離して次に示すように断片負イオンと中性断片に解離する過程.
AX + e → AX-* →
A(または A*) + X-(または X-*)
この負イオンの生成効率曲線は,一般に2 eV 以下の半値幅をもった正規分布を示す.この過程で生成した負イオンは,運動エネルギーをもっていることが多く,その運動エネルギーとAX分子の解離エネルギーおよび断片負イオンの出現電圧から,X原子または遊離基の電子親和力を求めることができる.また,この過程は複合負イオン状態の解離と自動電子脱離(autodetachment)の短時間内での競争反応であるので,断面積は複合負イオン状態生成の断面積と,その解離までに自動電子脱離をしない確率との積で表される.このことから,しばしば非常に大きい(10~100)重水素同位体効果が認められる.電子を捕獲し解離しない過程は,非解離共鳴電子捕獲という.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報