半値幅（読み）ハンチハバ

化学辞典 第2版

半値幅
ハンチハバ
half-width

ある変数に対して測定される物理量が，左右対称，あるいはほぼ対称な山形の曲線をなすとき，その1/2の高さにおける幅．たとえば，電子スペクトルの吸収曲線では，図の縦軸にモル吸光係数εを，横軸に波数をとり，ε_max の1/2の波数を_＋1/2(高波数側)，_－1/2(低波数側)とするとき，半値幅Δ _1/2は

Δ _1/2 ＝ _＋1/2 － _－1/2
で定義される．ときには，

_max － _－1/2 または _＋1/2 － _max
の2倍をとって半値幅にすることがある．赤外吸収スペクトルの場合も，縦軸に吸光度をとって上と同じ半値幅γが用いられる．半値幅は吸収帯の鋭さの度合を表すが，主として面積強度を近似的に計算するときに用いられる．NMR(核磁気共鳴)スペクトルでは，微分型の曲線を積分して得られる吸収型の曲線，すなわち広幅NMRスペクトルの幅を求めるのに三つの方法があり，その一つが半値幅法である．この場合も上と同様，高さの1/2の値を半値幅Δ H_1/2とする．円二色性曲線では正の円二色性の極大に関する半値幅が用いられる．ガスクロマトグラフィーおよび液体クロマトグラフィーでは，定量分析を行う際にクロマトグラムのピークの面積を求めるが，その一つの方法として，半値幅 b_1/2 とピークの高さhの積 b_1/2×hが用いられる．

出典　森北出版「化学辞典（第2版）」

改訂新版　世界大百科事典

半値幅 (はんちはば)
half-width
half-bandwidth

任意の孤立波形を特徴づける代表的パラメーターとして波形ピーク位置，ピーク高さ，波幅の3者がある。そのうち波幅は，図1のようにピーク高さの1/2の値をもつ点における幅⊿xで代表させることが多く，これを半値幅という。この表示については物理的な根拠はないが，例えば図2のように二つの同じ形状の孤立波形のピーク間距離が，となるときその二つは分離していると考えることが多い。この条件は孤立波の形状や相互の高さにも左右されるが，装置（電気回路を含む）が近接した波形をどの程度分離しうるかを判定する目安に使われる。ちなみに正規分布の半値幅は標準偏差σの2.35倍である。
執筆者：南 茂夫

図1～図2

出典　株式会社平凡社「改訂新版　世界大百科事典」

栄養・生化学辞典

半値幅

　クロマトグラフィーの結果得られるチャートなどの山のピークのところから半分の高さのところの山の幅．クロマトグラフィーの理論段数を求めたり，半値幅と高さから物質を定量するのに応用する．

出典　朝倉書店

世界大百科事典（旧版）内の半値幅の言及

【Q値】より

…その形は振動系の特性に応じて決まる。この曲線でw＝w_max/2となる角振動数がω₀±⊿であるとき，2⊿を半値幅，Q＝ω₀/(2⊿)をQ値と呼ぶ。半値幅が小さいほど，あるいはQ値が大きいほど，共振は鋭く，すなわちωがω₀にごく近い範囲でのみ共振が起きる。…

※「半値幅」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」