化学辞典 第2版 「非解離共鳴電子捕獲」の解説
非解離共鳴電子捕獲
ヒカイリキョウメイデンシホカク
non-dissociative resonance electron capture
0 eV に近い(常温において熱運動をしている)熱電子を捕獲して,解離せずに分子負イオンを生成する過程をいう.この過程は,電子エネルギー幅の非常に狭い( < 0.05 eV)共鳴過程である.生成した分子負イオンは,その電子親和力だけ高い振動励起状態にあり,ほかの分子などとの衝突または光放射して安定化(脱活)しなければ,一定時間後に自動電子脱離(autodetachment)する準安定イオンである.非解離共鳴電子捕獲する分子としてはSF6がよく知られており,その捕獲断面積は 10-14 cm2 と大きく,飛行時間型質量分析計によって測定された自動電子脱離までの寿命は,20 μs と振動の自由度から予想される寿命より長い.SF6以外にも多くの分子が非解離共鳴電子捕獲することが知られ,とくに発がん性物質として知られている物質のほとんどが,この過程で分子負イオンを生成する.この過程で分子負イオンを生成するもっとも簡単な炭化水素は,ナフタレンの異性体であるアズレンである.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報