詠史詩(読み)えいしし(英語表記)yǒng shǐ shī

改訂新版 世界大百科事典 「詠史詩」の意味・わかりやすい解説

詠史詩 (えいしし)
yǒng shǐ shī

歴史故事に題材を求めた中国の詩。後漢の班固の《詠史詩》はその最も古いもので,前漢文帝の時代の孝女緹縈(ていえい)の物語を主題として感慨をうたう。6世紀初に編まれた《文選(もんぜん)》では,詩の一体として〈詠史〉の部を設け,王粲(おうさん)〈詠史詩〉,曹植(そうしよく)〈三良詩〉以下,21首の作品を収める。王粲,曹植の詩は,ともに春秋秦の穆公(ぼくこう)に殉死した3人の忠臣の話をうたっている。この種の詩は歴史に借りて時事を風刺することが多く,3世紀末晋の左思の〈詠史詩〉8首はその典型といえる。彼は多くの史上の人物のイメージを通して,当時の厳しい門閥貴族制に対する憤懣を吐露している。晩唐の胡曾(こそう)の〈詠史詩〉150首は,太古から隋に至る間のさまざまな史事を詠んだもので,それぞれに関連する地名をもって題とする。興亡を追述し,勧戒を込めたものという。広義には,白居易の《長恨歌》のような詩もこの系列の作品とみなせる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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