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負ける建築 まけるけんちく

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知恵蔵2015の解説

負ける建築

建築家の隈研吾が2004年に刊行した同名の自著で提唱した建築観。都心に屹立(きつりつ)して巨大さや構造的な強さを誇示する高層ビル群やサラリーマンが多額のローンを組んで購入する郊外の一戸建て住宅などを「勝つ建築」としてとらえ、それとは異質な受動的な建築のあり方を目指したもの。この主張の背景には、画一的なデザインや重い金銭的負担によって都市生活者のライフスタイルを硬直させ、また周囲の環境を圧迫してきた従来の「勝つ建築」の価値観が、阪神・淡路大震災オウム真理教によるテロ事件、「9.11」といった近年の大きな社会的なカタストロフによって脆さを露呈したという認識がある。それに代わって周囲によく馴染み、様々な外力を受け入れる柔軟な建築を目指すべきだと主張する。建築家個人の美意識よりは社会との対話やコンセンサスを重視し、またバブル期の装飾過剰なデザインを戒め、周辺環境への配慮を強調している点では一種のサステイナブル(持続可能)な建築の提唱といえる。その視線は現在ばかりでなく、デ・ステイル、ルドルフ・シンドラー、村野藤吾らの過去の建築作品の再評価に対しても生かされており、今後の展開が期待される。

(暮沢剛巳 建築評論家 / 2007年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
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