改訂新版 世界大百科事典 「買地券」の意味・わかりやすい解説
買地券 (ばいちけん)
mǎi dì quàn
土地の売買証明書をいうが,中国考古学では墓地を購入したことを証明する文書に限っていい,しばしば墓の副葬品として発見される。後漢以降,近世までながく行われた。石,塼(せん),鉛,玉,鉄などの板に記したもので,内容は年月日,被葬者の住所・氏名・姓別・年齢,墓の所在地,土地の値段,土地の範囲などからなる。漢代のものには実際の状況を記したらしいものもあるが,後には冥界での架空の状況を記すようになる。つまり,天地から土地を購入し,もし土地争いが起これば,地下の神である〈土伯〉や天上の神である〈天帝〉のところへ訴えよという道教的な内容である。中国以外の例としては,韓国の百済武寧王陵から出土した買地券が著名である。日本では1979年に福岡県太宰府市の宮ノ本遺跡で,平安時代初期とみられる火葬墓から,長さ35.2cm,幅9.5cm,厚さ2mmの鉛板に刻んだ買地券が発見された。この買地券は赤外線テレビカメラにより,方1丈の土地を〈銭25文,鍫(くわ)1口,絹5尺,調布5口,白綿1目(斤)〉で買ったことが解読された。
執筆者:町田 章
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報