日本大百科全書(ニッポニカ) 「起きあがり小法師」の意味・わかりやすい解説
起きあがり小法師
おきあがりこぼし
張り子製の小法師人形の底に、土のおもりをつけた玩具(がんぐ)。倒してもすぐ起き上がるのでこの名がついた。原型は中国の酒胡子(しゅこし)に始まるといわれる。酒胡子は唐代からの木製人形で、尻(しり)がとがっている。盤中で転がしてしばらく舞ったのちに倒れると、その静止した方向の座にある者が杯(さかずき)を受けるという遊びに用いられた。明(みん)代(1368~1644)に紙張り子でつくられるようになり、酒席の玩具となった。室町時代に日本に渡来、転がしても起き上がることから、不老長生の意味で不倒翁とよんだが、童形(小法師)につくり変えられて子供の玩具となった。「小法師」とは子供の意である。当時の狂言『長光(ながみつ)』に、「なに、おきあがりこぼしじゃ、子供たちの土産(みやげ)にこれがよかろう」とあり、子供向きの玩具に商品化された。江戸時代初期に京坂地方では摂津の津村(大阪市)が産地として知られた。やがて上方(かみがた)から江戸へ伝えられ、広い社会層に迎えられた。「おきあがりこぼうし」「おきあがりこぶし」などともよばれ、玩具以外に「七転び八起き」の縁起と結び付いて置物にされ、七福神や達磨(だるま)の姿のものもつくられた。
[斎藤良輔]