土産(読み)みやげ

精選版 日本国語大辞典 「土産」の意味・読み・例文・類語

みやげ【土産】

〘名〙
① 遠隔地の産物などを送られた、あるいは入手した時に、近隣の者に裾分けすること。また、その品物
※山科家礼記‐応仁二年(1468)九月一六日「二松方国々みやけとて、越後布一段長門守殿へ被進候也」
旅先・外出先で求めて、家に持ち帰る品。いえづと。つと。
※後法興院記‐文亀二年(1502)九月一八日「頂妙寺住持来。此四五日自関東上洛云々。一乗和睦云々。みやけ綿一屯持来」
他人の家を訪問する時に持参する贈り物。手みやげ。つと。また、折りにふれて身近の人に贈り物をすることもいう。献上物
※実隆公記‐文明一八年(1486)八月一八日「自長橋、秡箱以下宮笥之」
※浮世草子・本朝桜陰比事(1689)五「やうやう銀弐百牧みやげを付ます」
[語誌](1)「みあげ」「みやげ」の前後関係は明らかでなく、したがってその語源もはっきりしない。
(2)「みやげ」に「土産」の字をあてるようになったのは室町末以降と考えられる。

と‐さん【土産】

〘名〙 (「どさん」とも)
① その土地の産物。
※宝生院文書‐永延二年(988)一一月八日・尾張国郡司百姓等解「右染丹羽郡土産也」
※とはずがたり(14C前)四「伊勢しまのとさんなりとて」 〔許棠‐送龍州樊史君〕
② (その土地の産物を持参するところから) 訪問先などにさし出す物。みやげ。みやげもの。つと。〔易林本節用集(1597)〕
咄本醒睡笑(1628)二「年頭祝儀に参られ、土産を懐よりとり出し」

みあげ【土産】

言継卿記‐天文三年(1534)正月二日「従持明院指貫事被申候間遣、針一、耳掻一、南都見上とて到」

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デジタル大辞泉 「土産」の意味・読み・例文・類語

みやげ【土産】

外出先や旅先で求め、家などに持ち帰る品物。
他人の家を訪問するときに持っていく贈り物。手みやげ。「土産に酒を持参する」
迷惑なもらい物を冗談めかしていう語。「伝染病という、とんだ土産をもって帰国した」
[類語]手みやげお持たせ置きみやげ

ど‐さん【土産】

《「とさん」とも》
その土地の産物。
みやげもの。みやげ。
[類語]産物物産

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普及版 字通 「土産」の読み・字形・画数・意味

【土産】どさん

土地の産物。唐・白居易〔東南行一百韻~〕詩 飄零(へうれい)することに同じ (かうたう)桴(いかだ)に乘るに似たり 漸く覺ゆ、原の異なるを 深く知る、土の異なるを

字通「土」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「土産」の意味・わかりやすい解説

土産
みやげ

旅行先から持ち帰った物、また転じて、他家を訪問する際に持って行く物をいう。元来の意義は、宮笥と書くところからも、神詣(もう)での旅先で授かったお札(ふだ)とか、縁起物、その門前地の特産品などを贈って、詣でた寺社の神仏の恩恵を分かち与えるため、持ち帰った物を人々に配ることに土産の意味があった。もともと、神社や寺の祭礼や縁日は、市(いち)と関係が深く、参拝客が集まる所に自然に市も発達し、そこで社寺にちなんだ縁起物のほかに、その土地の産物が売買されたことは自然の成り行きであった。土産物にも、その土地の物産品が用いられるようになって、「土産」の字をあてるようになったとみられている。古くは信仰的な贈り物以外のものは「つと」といい、「家づと」「都のつと」などというふうに使われた。なお、嫁入り、聟(むこ)入りなどのときに持って行く金銭、持参金、土産金なども土産とよばれている。

[高野 修]

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世界大百科事典 第2版 「土産」の意味・わかりやすい解説

みやげ【土産】

旅先や外出先でその土地の産物を求めて帰り,家族や餞別(せんべつ)をくれた者などに配る品,また人を訪問する際に持参するいわゆる手みやげをもいう。古くはつと(苞)と称し,〈家づと〉〈都のつと〉などと用いた。つとは納豆を包んだりするわらづとなどにその名をとどめているように,元は持ち運びに便利な包物のことを指した。《万葉集》などにみえる例では花や貝など自然の物が多い。みやげの語源には〈都笥〉〈宮笥〉〈屯倉〉〈都帰〉など諸説あり,また近年,〈見上げ〉すなわちよく見て選び差し上げることからの転とする説も示されたが,定説はない。

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世界大百科事典内の土産の言及

【贈物】より

…これに対し地位にかかわりなく相手への援助を旨とする贈物は見舞と称される。また旅の帰りや訪問など人の移動に伴う贈物が土産(みやげ)であり,このほか祝福や感謝の印としての御祝や御礼など,日本の贈物には状況に応じて名目の区別がある。 贈物をする習慣は古今東西を問わず広く存在する行為であるが,ヨーロッパなどでは歴史的に都市の発達した中世以降,贈与慣行は貨幣経済に駆逐され衰退していったといわれている。…

※「土産」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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