日本大百科全書(ニッポニカ) 「身替りお俊」の意味・わかりやすい解説
身替りお俊
みがわりおしゅん
歌舞伎(かぶき)劇。富本(とみもと)節を使った半舞踊劇で、本名題(ほんなだい)『花川戸身替(はなかわどみがわり)の段(だん)』。初世桜田治助(じすけ)作詞、名見崎徳治(なみざきとくじ)作曲。1783年(天明3)春、江戸・中村座で4世岩井半四郎のお俊、2世市川八百蔵(やおぞう)の伝兵衛、2世市川門之助の白藤源太(しらふじげんだ)により初演。花川戸の芸者お俊が旧主園生(そのう)の前を助けるため、力士白藤源太に恋慕とみせ、わざと相愛の井筒屋伝兵衛と縁を切り、心を察した源太の手にかかって身替りとなる。伝兵衛への愛想づかしと源太へのクドキが中心。お俊が湯上(ゆあが)り姿で登場するので、「湯上りお俊」の別称もある。のち清元(きよもと)に改曲(清元斎兵衛作曲)され、1825年(文政8)3月、中村座で『其噂桜色時(そのうわささくらのいろどき)』の名題により上演。現代ではもっぱらこれが演じられる。
[松井俊諭]