改訂新版 世界大百科事典 「農林番号」の意味・わかりやすい解説
農林番号 (のうりんばんごう)
農林水産省所属の研究機関や,各県に点在している国指定試験地で育成された農作物品種につけられる登録番号。1925年にコムギ,翌年から水稲について,全国組織として交雑育種法による新品種の育成試験が始まったが,この計画で生まれてきた新品種は農林番号で呼ばれるようになり,順次他の作物についても同様の方法が適用されるようになった。それぞれの作物名を冠して〈水稲農林1号〉とか,〈小麦農林1号〉とか呼ばれるようになり,これらの品種については現在もこの呼び方が品種名となっている。短稈(たんかん)性の〈小麦農林10号〉は,〈緑の革命〉を起こしたメキシコで育成された短稈コムギの親の一つとして世界的に有名である。しかし,1950年以降に登録された品種については,農林番号とともに固有の名前がつけられるようになった。二つの名のうち,国内外で一般に正式名として用いられるのは,固有の名前のほうである。レイメイ(人為突然変異育種で初めてできた水稲品種),アサカゼコムギ(早生のコムギ品種),コガネセンガン(多収性のサツマイモ品種)などはその例である。通し番号のほうが処理はしやすいが,なじみにくく,外国でも一般に固有の名まえをつける。
執筆者:武田 元吉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報