品種(読み)ひんしゅ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「品種」の意味・わかりやすい解説

品種
ひんしゅ

栽培植物や飼養動物には、分類学上では同一の種に属するが、形態的にあるいは生理・生態的に異なった多くの個体群ないしは系統が知られている。これらそれぞれが品種とよばれるものである。人間は長年にわたって動植物を、利用のため、あるいは愛玩(あいがん)用として、栽培・飼育してきたが、その間に生じた変異を分離して固定させ、さらに目的に応じて新しい系統をつくりだした。品種を改良して新しい品種を育成することは育種とよばれ、純系分離、系統分離、交雑、倍数体や突然変異の利用生成などの方法がとられてきたが、近年は組織培養や遺伝子組換えなど操作技術の著しい発達によって、微生物など目的に沿って新しい品種ないし系統をつくりだすことが可能となってきた。異なった長所をもつ品種間の交配や、X線照射・薬品処理などによる新たな突然変異・倍数体の生成により、研究が進められてきた食料その他の増産や改良などは、人類の繁栄や生活向上に大きな貢献をしてきたが、今後もさらに発展が期待されよう。

 一般の動植物にみられる地域的な変異、地方型のことを品種とよぶことがあり、また同一地域内の生態ないし生理的な系統を品種ということもあるが、適当ではない。

[中根猛彦]

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精選版 日本国語大辞典 「品種」の意味・読み・例文・類語

ひん‐しゅ【品種】

〘名〙
① 種類。たぐい。
※泰西国法論(1868)〈津田真道訳〉二「国民品種の区別に由て国民互に隔絶して相交らず」
② 生物分類学上で、分類群の階層を示す一単位。種の下位の単位で、同一種に属するがわずかに一~二の形質が他の集団と異なる場合に、その双方を品種として区別する。
③ 栽培植物や飼育動物の同一種内で、実用的形質をはじめ、少数の形質が他の集団と異なり、その違いの各々が遺伝する場合、その双方の集団をいう。
※稲熱病(1939)〈岩倉政治〉五「表土(うはづち)のあんまり軟か過ぎる田は特にひどいといふものがあり、品種についても大体野木の知ってゐる通りのことが指摘された」
④ 品物・商品の種類。「多品種少量生産

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「品種」の意味・わかりやすい解説

品種
ひんしゅ
breed

作物の栽培または家畜の飼育,あるいはそれらの利用上,一定の特徴に基づいて同一の単位として分類される個体群。生物分類学上の種,亜種変種などの区別は,形態的変化と生態的特徴を基準とするのに対して,品種は外観上同一の生物でも,生育遅速,成熟期の早晩,種々の障害に対する抵抗性,収量,品質,色沢,香味など,栽培,飼育,利用上の相違を考慮した基準。一つの種「イネ」に属する水稲の品種は三千余に及ぶといわれる。

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流通用語辞典 「品種」の解説

品種

商品分類の用語で、商品分類の中項目(中位分類)にあたるもの。商品系列(品群)のさらなる分類で類似字品目の集合である。衣料品のスカート(商品系列分類)でいえば、タイトスカートギャザースカート、プリーツスカート、キュロットスカートなどが品種分類にあたる。

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デジタル大辞泉 「品種」の意味・読み・例文・類語

ひん‐しゅ【品種】

品物の種類。
同一種の栽培植物や飼養動物で、形態や性質の変異が遺伝的に分離・固定されたもの。
生物分類で、種の下位の単位の一。同一種であるが、1、2の形質について異なる型である場合に用いる。
[類語]種類ジャンル範疇たぐい

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世界大百科事典 第2版 「品種」の意味・わかりやすい解説

ひんしゅ【品種】

優秀性,均一性,永続性が遺伝的に保たれ,固有の特性によって他と区別されるような一群の農作物や家畜をいう。英語では作物の場合cultivarまたはvarietyといい,家畜の場合はraceまたはbreedという。農林水産業でとくに重視される実用的概念である。動植物に人為的な操作を加えると,各種の特徴をもった子孫をつくることができ,その特徴の一部は遺伝質として後代に伝わっていく。重要な特徴が,実用的に支障のない程度にまで同じようになり,半永久的に変わらないようになったグループが品種であり,品種名がつけられて利用される。

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