内科学 第10版 「透析不均衡症候群」の解説
透析不均衡症候群(腎疾患に伴う神経系障害)
急速な血液透析時や透析導入時に起こりやすい.維持透析ではまれ.特に血中尿素窒素(BUN)が著しく高値である者,高齢者,小児,てんかんなどの中枢神経疾患を有する患者では透析導入時に透析不均衡症候群を伴いやすい.急速な血液透析や腹膜灌流により血中の尿素などの浸透圧物質が急激に除去され,血液と脳組織の間の浸透圧較差が生じ,水が脳組織に移行し,脳浮腫が生じるためと考えられている.水中毒様症状は抗利尿ホルモンの不適切な分泌も関与していると考えられている.頭痛,悪心などの頭蓋内圧亢進症状,筋痙攣は50%以上にみられ,5%以上に,朦朧,痙攣,譫妄がみられる.乳頭浮腫,脳波の徐波化がみられることもある.症状は透析開始後3~4時間で出現し,数時間持続し,一過性で透析終了後数時間以内に改善するが,譫妄は数日間持続することもある.導入期には緩徐な透析を行い,症状がみられる場合は一時透析を中止し,グリセロール,ジアゼパムなどを投与する.[高 昌星]
■文献
Ropper AH, Samuels MA: Adams and Victor's Principles of Neurology, 9th ed, McGraw-Hill, 2009.
Rowland LP, Pedley TA: Merritt's Neurology, 12th ed, Lippincott Williams & Wilkins, London, 2010.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報