…南宋のころ,宮廷抱えの講釈師が史書を進講したのが始まりであるとされている。日本には軍談物の概念で受けいれられ,《通俗三国志》(1690)のごとき翻訳も試みられたが,本格的に読まれるようになったのは岡島冠山ら唐話学者出現以後のことで,とくに《通俗忠義水滸伝》の読解は,日本の小説界に大きな影響を与えることになった。建部綾足(たけべあやたり)の《本朝水滸伝》(1773)は,本格的な演義体小説として書かれた最初の書で,《南総里見八犬伝》に至って完成された長編伝奇の形式を日本にもたらしている。…
…そののち多種多様の刊本が出版されたが,120回(章)に分かつ毛宗崗(もうそうこう)本が17世紀の末以来広く流布している。ただし日本では元禄2年(1689)湖南の文山(ぶんざん)が和訳した《通俗三国志》が久しく広く読まれているのだが,その訳の底本となったのは毛本よりやや早い李卓吾本とよばれるものだから,その内容が毛本とは少しく出入りがあることは注意しなければならない。《三国演義》は魏・呉・蜀三国の分立の世を舞台とし,そこで争われる武勇と知謀の物語である。…
※「通俗三国志」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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