逸早・逸速(読み)いちはやし

精選版 日本国語大辞典 「逸早・逸速」の意味・読み・例文・類語

いち‐はや・し【逸早・逸速】

〘形ク〙 (「いち」は、勢いやその程度のはなはだしいことを示す接頭語。「逸」は当て字。「はやし」は激しい意)
[一] 程度がはなはだしく激しい。
霊威が激しく恐ろしい。荒々しくすさまじい。
書紀(720)欽明五年一二月(寛文版訓)「浦の神厳忌(イチハヤシ)。人敢(あへ)て近づかず」
※宇治拾遺(1221頃)三「熱田神(あつたのかみ)いちはやくおはしまして〈略〉やがてたちどころに罰せさせおはしましければ」
② きびしく容赦がない。てきびしい。激しい。
※伊勢物語(10C前)一「昔人はかくいちはやきみやびをなんしける」
気性が激しい。気が強い。
源氏(1001‐14頃)賢木「后(きさき)の御心いちはやくて、かたがたおぼしつめたる事どものむくいせむとおぼすべかめり」
[二] (速度、時間が)きわめて速い。
① 迅速、機敏である。速度が速い。
※宇津保(970‐999頃)国譲下「真言院の律師一人、いちはやく読む」
※読・椿説弓張月(1807‐11)拾遺「とまらぬ仇人(かたき)はいちはやく、〈略〉繁きが中に飛び入りぬ」
② 気が早い。性急だ。すばやい。
蜻蛉(974頃)下「いちはやかりける暦は不定なりとは」
増鏡(1368‐76頃)一「いまだ御五十日(いか)だにきこしめさぬに、いちはやき御もてなし、めづらかなり」
[語誌](一)の非常に激しいさまから、(二)の速度が甚だしいさまに意味が広がっていった。現代語では、連用形「いちはやく」が副詞化して(二)の意味で用いられる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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