とんぼう とんばう【蜻蛉】
〘名〙 (「とうぼう(蜻蛉)」の変化した語)
※康頼本草(1379‐91頃)本草虫部下品集「蜻蛉 和止ム波宇」
※花屋抄(1594)「かげろう三色有。一つはとんばうのかたちしてはねの色みの色」
※
浄瑠璃・国性爺後日合戦(1717)嫁入式三献「間にもたらぬとんぼうめ」
※浄瑠璃・
志賀の
敵討(1776)「髪も美しう、とんばうも今はやる
糸巻じゃな」
[
補注]語源未詳で、歴史的
かなづかいも明確ではないが、
室町時代までの表記が「とうぼう(蜻蛉)」の例を含めて、「とんばう」「とうばう」のように「ばう」であって「ぼう」でないところから「とんばう」としておく。なお、「とばふ」に「う」音が添って「とうばふ」「とんばふ」となったとする説もある。
とうぼう とうばう【蜻蛉】
※
梁塵秘抄(1179頃)二「居よ居よとうばうよ、かたしをまいらんさて居たれ」
えんば ゑんば【蜻蛉】
[補注]「十巻本和名抄‐八」に「
赤卒 〈略〉阿加恵无波」また「
胡黎〈略〉歧恵无波」とある。
あけず あけづ【蜻蛉】
〘名〙 (「あ
きつ」の変化した語か)
トンボをいう。
※
混効験集(1711)上「あけづ、蜻蛉の事、和詞にはあきづと云」
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デジタル大辞泉
「蜻蛉」の意味・読み・例文・類語
とんぼ【蜻=蛉/蜻=蜓】
1 トンボ目の昆虫の総称。頭部の複眼は大きく左右に突出し、単眼は3個ある。触角は短く、かむ口をもつ。胸部には長大な2対の翅をもつ。腹部は長く棒状。幼虫は水生で、ヤゴとよばれる。成虫・幼虫ともに他の昆虫を捕食する。不完全変態。イトトンボ・サナエトンボ・オニヤンマ・アキアカネ・シオカラトンボなど。あきつ。かげろう。せいれい。とんぼう。《季 秋》「とどまればあたりにふゆる―かな/汀女」
2 トビウオの別名。とんぼうお。
3 歌舞伎で、役者が立ち回り中に切られたり投げられたりしたときなどに、手をつかずに宙返りすること。とんぼがえり。「―を切る」
4 印刷で、刷り位置を正確にするために版や原稿につける十文字の印。
5 運動場を整地する道具の通称。木製・金属製の丁字形の棒で、地面をならして平坦にする。形状が1に似ることによる呼び名。
6 「蜻蛉結び」の略。
7 「蜻蛉持ち」の略。
[補説]作品名別項。→蜻蛉
[類語]とんぼ返り・もんどり・宙返り・でんぐり返る
とんぼ【蜻蛉】[曲名]
《原題、〈ドイツ〉Die Libelle》ヨーゼフ=シュトラウスの管弦楽によるマズルカのリズムをもつポルカ。1866年初演。ヨーゼフがハイキングで見かけたとんぼに着想を得て作曲された。
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蜻蛉 (トンボグサ)
植物。スベリヒユ科の一年草,薬用植物。スベリヒユの別称
蜻蛉 (カゲロウ)
蜻蛉 (トンボ)
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
世界大百科事典内の蜻蛉の言及
【トンボ(蜻蛉)】より
…【朝比奈 正二郎】
【伝承と民俗】
[日本]
古くは〈あきづ〉と呼ばれ,日本の国土を〈あきづしま〉という。神武紀に,天皇が〈国の状(かたち)を廻(めぐ)らし望〉んで〈蜻蛉(あきづ)の臀呫(となめ)の如くにあるかな〉といったので〈秋津洲(あきづしま)〉と呼ぶようになったとある。民間では,初秋に突如として群れをなして飛来するところから,祖霊が姿をかえてやってくるとみてこれをとらえることを忌み,とらえると〈盆と正月礼にこい〉と唱えて放つ風習があった。…
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