遅延蛍光(読み)チエンケイコウ

化学辞典 第2版 「遅延蛍光」の解説

遅延蛍光
チエンケイコウ
delayed fluorescence

有機蛍光体に固有の蛍光現象で,スペクトルは通常の蛍光とほとんど同じでありながら,寿命ははるかに長くりん光程度の値を示す.しかも,遅延蛍光の強さは励起光強度の2乗に比例する.フェナントレンアントラセンなどの結晶において,またナフタレントリフェニレンなどでは低温剛体ガラス中において観測されている.機構についてはまだ定説はないが,三重項状態が関与した2光子過程であり,たとえば2個の三重項状態の消滅による1個の一重項励起状態生成と考えることができる.放射線励起では線エネルギー付与(LET)の大きいときに顕著であることを応用して,シンチレーション・パルスの形によってLETの異なる放射線,たとえばα線とγ線を区別することができる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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