波長が0.01オングストローム(Å)よりも短い、すなわち光量子のエネルギー(hν)でいえば数百キロ電子ボルト(keV)以上の電磁波をγ線とよんでいる。波長の大きさの順に、電波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線と、同じ光であっても波長によって名前が異なっているが、それは物理学の歴史に現れたときの出所や由来によるものである。
1896年にベクレルとキュリーによって、放射性物質から出てくる放射線には三つの成分があることが発見され、それぞれα(アルファ)線、β(ベータ)線、γ線とよんだ。そのうち電荷をもたないγ線がきわめて波長の短い電磁波であることがわかった。放射性元素の崩壊に伴うγ線は、生成核が励起状態から、より低い状態または基底状態に落ちるときに発せられるもので、そのエネルギーhν(hはプランク定数、νは振動数)は遷移状態間のエネルギー差に等しい。人工的にγ線をつくるには、電子をシンクロトロン加速器のようなもので加速し、それを物質、たとえば鉛に当てる。電子は運動エネルギーの一部を制動放射によって放射の形で放出する。加速電子のエネルギーが低ければ連続X線、高ければ連続γ線が得られる。また加速電子にレーザー光線を照射すると、コンプトン散乱によって波長の短い光に変換することができ、高エネルギーγ線を得ることができる。γ線は透過能力が他の放射線に比べて高いので、医療や材質検査などに広く用いられる。強い放射線源として原子炉でつくられるコバルト60(60Co)がラジウムのように高価ではないので一般に広く用いられる。コバルト60は0.3MeV(MeVは100万電子ボルト)のβ線を出してニッケル60となり、1.33MeVおよび1.17MeVの強いγ線を出す。波長のきわめて短い高エネルギーのγ線を原子核や素粒子に照射して、その構造を研究するために有用な手段として用いられている。
[村岡光男]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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