遍し(読み)アマネシ

デジタル大辞泉 「遍し」の意味・読み・例文・類語

あまね・し【遍し/普し】

[形ク]すみずみまで広く行き渡るさま。残すところがないさま。くまない。
「改め変はる事なく、―・き親心に仕うまつり給ふにも」〈匂宮

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「遍し」の意味・読み・例文・類語

あまね・し【遍・普】

  1. 〘 形容詞ク活用 〙 すみずみまで広くゆきわたっている。あばねし。
    1. [初出の実例]「慕(ねが)ひを懐きて遍(アマネク)殊の方を歴(へ)、遠く皇威に頼(よ)りて期せる所咸く済(な)したり」(出典:大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃))
    2. 「火の光に映じて、あまねく紅なる中に」(出典:方丈記(1212))

遍しの語誌

( 1 )確例は平安時代初期からしかみられないが、「万葉‐一五五三」の「時雨の雨 間無くし降れば三笠山木末(こぬれ)(あまねく)色づきにけり」と読まれている例などを考えると、上代にも存した可能性は高い。
( 2 )第二音節「ま」が「ば」と交替した「あばねし」の形が一一世紀初頭にみられるのは、「さみし」「さびし」と併行する現象である。
( 3 )日葡辞書」には「Amanei(アマネイ)」「Amaneô(アマネウ)」の形も存するが、現代語ではアマネクの形のみで、文語的ニュアンスが強く、一般には「広く」が用いられる。


あばね・し【遍】

  1. 〘 形容詞ク活用 〙あまねし(遍)
    1. [初出の実例]「人天六趣並(アハネク)皆仏と成る」(出典:法華義疏長保四年点(1002)序)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android