遙拝隊長(読み)ようはいたいちょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「遙拝隊長」の意味・わかりやすい解説

遙拝隊長
ようはいたいちょう

井伏鱒二(いぶせますじ)の短編小説。1950年(昭和25)2月『展望』に発表。同年6月、文芸春秋新社刊の『本日休診』に収録。絶えず遙拝式を行うことで、遙拝隊長とあだ名をつけられた陸軍中尉岡崎悠一は、マレー戦線での頭の負傷が原因で気が狂い、敗戦後も、戦時中と錯覚し、郷里の人々に遙拝式を強制したりする。少年時から神がかり的な軍国思想をたたき込まれ、それをまともに信じて狂信的軍人になってしまった人間の悲喜劇を描いた作品で、おかしみを通して、戦争イデオロギーを痛烈に告発している。戦争文学秀作である。

磯貝英夫

『『遙拝隊長・本日休診』(新潮文庫)』

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