配位子場吸収帯(読み)ハイイシバキュウシュウタイ

化学辞典 第2版 「配位子場吸収帯」の解説

配位子場吸収帯
ハイイシバキュウシュウタイ
ligand field absorption band

配位子と中心イオンの軌道相互作用によってd軌道が分裂し,d軌道のエネルギーと電子間反発エネルギーから得られる準位間の電子遷移によって観測される吸収帯を,配位子場吸収帯という.d軌道間の遷移によるのでd-d遷移ともいい,禁制遷移(Laporte禁制)であるため,吸収強度はεで約10~102 である.この吸収帯にはスピン許容吸収帯と,スピン禁制吸収帯とが含まれ,後者の吸収強度はとくに小さくなる.前者については分光化学系列が知られている.配位子場吸収帯は可視領域,およびその近傍に現れるので,一般に,錯体とよばれる化合物の色の原因となる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の配位子場吸収帯の言及

【配位子場理論】より

…このときどこかに必ず電子の入っていない軌道があり,入っている軌道との間に電子遷移を生ずることになる。この電子遷移(d‐d遷移)が原因となって光吸収が起こるとき,可視部に吸収帯(配位子場吸収帯)を生ずることが多く,その結果,遷移金属の化合物に着色しているものが多いことになる。そして中央イオンが通常の酸化状態にある配位化合物では,配位子の種類に応じ吸収帯の波長域が推移することが見いだされており,これを分光化学系列と呼んでいる。…

※「配位子場吸収帯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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