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遷移 せんいtransition

翻訳|transition

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

遷移
せんい
transition

(1) ある定常状態量子力学的系が,摂動として働く相互作用により,ある確率で他の定常状態に移行すること。光子を放出して低いエネルギーをもつ定常状態へ移ったり,あるいは光子を吸収して高いエネルギーの安定状態へ移る現象などがその例である。光子の放出・吸収は電磁場との相互作用によって起るが,一般に強い相互作用弱い相互作用により,各種の粒子の放出・吸収を伴う遷移が知られている。一般に,高次の摂動などによる中間状態を経て起る遷移も含めることもある。 (2) ある状態から他の状態へ移る現象。 (→転移 )

遷移
せんい
succession

生態学用語で,一定場所の生物集団,ことに植物の群落が次々に構成内容を変えて,最終の安定状態 (極相 climax) へと移っていく過程をいう。 F.クレメンツがこの考えを集大成した (1916) 。その見解では,陸上での裸地から出発する乾性遷移も,沼地から出発する湿性遷移も,同一環境下では同じ最終状態に向って遷移するとされたが,この点では異論もある。

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デジタル大辞泉の解説

せん‐い【遷移】

[名](スル)
移り変わること。移り変わり。
一定の地域の植物群落が、それ自身の作り出す環境の推移によって他の種類へと交代し、最終的には安定した極相へと変化していくこと。岩などの裸地から始まるものを一次遷移植生の一部または全部が破壊されたところから始まるものを二次遷移という。サクセッション。植物遷移。
量子力学で、ある定常状態から、ある確率で他の定常状態へ移ること。その際にエネルギーの授受が起こり、光子などの粒子を放出または吸収する。転移。

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百科事典マイペディアの解説

遷移【せんい】

生態学用語。時間の経過とともに植生が一定の方向へ変化していくこと。その最終段階を極相(climax)と呼ぶ。火山の溶岩などから出発する乾性遷移系列では,まず地衣類コケ植物が生え,草本,低木林,陽樹の森林を経て,陰樹の極相林に至るというのが典型的なものである。
→関連項目群落(植物)原生林生態学

遷移【せんい】

転移とも。量子力学的な系がある定常状態(時間が経過しても変化しない状態)から他の定常状態へ外部からの作用によって移る現象。たとえば原子に光を当てると,原子は光を吸収して定常状態から別の(エネルギーの高い)定常状態に移ることが可能になる。

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世界大百科事典 第2版の解説

せんい【遷移 succession】

ある一定の場所で,生物群集の構成が一つの方向に向かって移り変わっていく現象。遷移の最終段階は極相climaxで,極相に到達すると遷移は停止し,生物群集は安定する。普通は植生の変化を意味するが,動物群集や生態系の変化を含めることもある。耕作を放棄した田畑が草原を経て森林に移り変わるというような長くても数千年の変化を意味し,気候変動や植物の進化に伴う地史的年代での植生の変化である地質学的遷移geological successionと区別するために,生態(学的)遷移ecological successionともいう。

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大辞林 第三版の解説

せんい【遷移】

( 名 ) スル
うつりかわること。うつりかわり。推移。
ある場所の植物群落が長年月の間に次第に別の群落に変わってゆくこと。裸地に一つの群落が成立するとその場所の環境条件を変化させ、それに適合した別の植物群が生育するようになるために起きる。 → 極相一次遷移二次遷移乾生遷移湿生遷移
量子力学で、粒子などがあるエネルギーの定常状態からエネルギーの異なる他の定常状態へある確率で移ること。転移。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

遷移
せんい

植物群落が時間とともに一定の方向性をもって変化していくこと。サクセッションsuccession、生態遷移などともいう。既存の植生が破壊され、裸地ができると新しい植物群の侵入が始まる。この段階を始相または先駆相とよぶ。ついで途中相のいくつかの段階を経て、最終的にはそれ以上には種類組成や群落構造が大きく変化しない極相に至る。この一連の群落発達の過程を「遷移系列」という。遷移系列には、火山、埋立地などの新生地で、かつて植物がまったく生育したことがない土地に始まる一次遷移と、既存の植生のみが破壊されて、土壌やその中にみられる埋土(まいど)種子、植物の根株などが残っている土地で始まる二次遷移とが区別される。この一次遷移と二次遷移のそれぞれについては、さらに、遷移が始まる土地が、岩上や砂地など陸上でみられる乾生遷移系列と、湖沼など水界から始まる湿生遷移系列とが区別される。また、自然にみられる遷移の方向(正常遷移系列)に対して、人為の影響などで遷移の方向が変化し、正常系列では出現しない特殊な群落(たとえば、火入れをしたときに出現するカシワ林、家畜などの踏みつけによる裸地にできるシバ草原)ができることがある。これを偏向遷移系列という。
 遷移の結果到達する極相には、さまざまな説が提唱されている。クレメンツは、その地域の大気候に対応した群落のみを極相(気候的極相)とする単極相説を主張している。この立場にたつと、初期条件は岩上、砂上のように乾生であったり、水体のように湿生であっても、究極的には中生立地に成立する単一の極相に収斂(しゅうれん)していくということになる。一方、タンスリーA. G. Tansley(1871―1955)は、生物的、土壌的、地形的に規定される極相もありうるという多極相説を主張している。また、ホイッタカーR. H. Whittaker(1920―1980)は、地域の環境傾度に応じて群落が示すパターンが極相であるとする極相パターン説を唱えている。それぞれに一理はあるが、遷移の過程を群落の発達モデルととらえると、クレメンツの気候に応じた単極相説が妥当である。
 遷移に伴って植物群落の諸属性は変化するが、とりわけ群落内の環境(光、湿度、風など)が大きく変化すると、それが遷移の動因ともなっていく。このように植物群落が環境を変えていく働きを環境形成作用という。これは遷移に伴って生態系そのものが変化していくことでもある。生態系の属性の変化としては、(1)生態系の総有機物量や窒素量が増大する、(2)種多様性が増大する、(3)群落の階層分化が進む、(4)食物連鎖は直線的から網目状になる、(5)栄養塩の循環が開放的から閉鎖的になる、(6)純生産が低くなる、(7)総生産量と総呼吸量の比が一に近づく、(8)現存量当りの総生産量が低くなる、といった特徴がある。これらの属性から生態系をみると、全体としてはエントロピー(物体の状態量の一つ)が低くなり、体制化が進む方向へと変化していることを示している。
 遷移の過程は植生帯によっても異なる。中部日本の常緑広葉樹林域における一次遷移の例では、まず溶岩流上や火山灰の裸地にイタドリやススキなど多年生草本が侵入し、ついでオオバヤシャブシ、ハコネウツギなどの先駆低木林となる。やがて、下層にヒサカキ、シロダモなどの常緑樹が侵入し、アカメガシワ、カラスザンショウ、オオシマザクラなどが混交した林となり、最終的にスダジイの優占した極相林となる。こうした遷移に伴って動物相も変化していく。初期の動物相はアリ、アリマキ、テントウムシ、クモ、ゾウムシなどであるが、やがてワラジムシ、ダンゴムシ、トビムシなど植物遺体を食べる虫がみられるようになり、さらに進むと陸生甲殻類、ミミズなども認められるようになる。しかし、同じ中部日本の地域でも放棄畑から始まる二次遷移になると、最初はブタクサ、エノコログサ、メヒシバといった一年生植物の先駆相が形成され、ついでヒメジョオン、オオアレチノギク、マツヨイグサ類などの二年生草本となる。やがてススキ、ハギ、ガマズミなどの低木を交えた多年生草本群落となり、コナラ、イヌシデなどの途中相の落葉樹林を経て、極相のスダジイ林になる。[大澤雅彦]

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世界大百科事典内の遷移の言及

【クレメンツ】より

…ネブラスカ大学,ミネソタ大学で教授をつとめてのち,カーネギー研究所員となる。業績は生物学の広い分野にわたるが,とくに植物群落の遷移について,群落と環境の間での相互作用および光や水をめぐる個体間の競争を動因として遷移の機構を説明し,遷移の研究を体系化したことで名高い。単極相説を主唱。…

【生態学】より

…それまでは個々の種またはその代表としての個体しか見ていなかったといえるからである。植物群落については,その後まもなく,群落の自律的な時間的変化が注目され,この現象は遷移と呼ばれて新しい研究対象となった。そして群落を個体に対比して,群落の構造,群落の機能,群落の分類が研究されるべきであるとされ,群集生態学が提唱された。…

【富栄養化】より

…富栄養湖は,堆積が進むことによりさらに浅くなり,水草が湖心まで繁茂する沼,沼沢を経て,全面に抽水植物が繁茂する湿原となる。貧栄養湖から湿原に至る上述のような湖の変遷を湖の遷移という。生物が年をとっていく経過になぞらえて〈エージングaging〉ということもある。…

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