日本大百科全書(ニッポニカ) 「酢酸デスモプレシン」の意味・わかりやすい解説
酢酸デスモプレシン
さくさんですもぷれしん
desmopressin acetate
中枢性尿崩症の治療薬。夜尿症治療薬。止血薬。バソプレシン誘導体。脳下垂体後葉ホルモンであるバソプレシンと同じ作用を示す。すなわち、腎(じん)の尿細管における水の再吸収を促進し、バソプレシン不足による尿濃縮機能の低下を回復させ、抗利尿作用を発揮させる。点鼻液、噴霧剤(エアゾール剤、スプレー)として用いられ、鼻粘膜から吸収させて効果を発揮する。点鼻液には0.01%溶液が用いられ、噴霧剤にはデスモプレシンスプレー2.5とデスモプレシンスプレー10の濃度の異なる2種の製品が市販されており、デスモプレシンスプレー2.5は中枢性尿崩症に、デスモプレシンスプレー10は夜尿症の治療に用いられる。また、デスモプレシンが血液凝固第Ⅷ因子およびフォンヴィレブランドvon Willebrand因子を血中に遊離放出させる作用があることがわかり、軽症、中等症血友病A・フォンヴィレブランド病の出血時の止血管理に注射剤として使用される。重大な副作用に脳浮腫、昏睡(こんすい)、けいれんを伴う重篤な水中毒(低ナトリウム血症)がある。夜尿症に用いるデスモプレシンスプレー10では、外国で重篤な副作用が報告されたことから、使用に際し患者およびその家族に対し、説明、指導するよう警告がなされている。
[幸保文治]