昏睡(読み)こんすい

精選版 日本国語大辞典 「昏睡」の意味・読み・例文・類語

こん‐すい【昏睡】

〘名〙
① ぐっすりと眠りこむこと。また、意識がまったくなくなって、目ざめさせることができない状態。
※蕉堅藁(1403)答久菴和尚書「小弟比患痢疾、旬日間殆不人。両日前、方復小康、昏睡中、獲手書并越燭、喜甚」 〔南史‐劉峻伝〕
医学で、意識障害のうち意識混濁のもっとも強いもの。呼んでもゆすっても呼びさますことができない状態。脳および髄膜疾患、伝染病や熱射病その他の中毒が原因。〔医語類聚(1872)〕

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デジタル大辞泉 「昏睡」の意味・読み・例文・類語

こん‐すい【×昏睡】

[名](スル)
前後も知らず深く眠り込むこと。また、その眠り。「酔って昏睡する」
高度の意識障害の状態。完全に意識が失われ、こんこんと眠っており、刺激に対して反応しない状態。
[類語](1睡眠快眠安眠寝る眠り就眠睡臥すいが熟睡熟眠居眠りねんね爆睡惰眠嗜眠夢寐一睡不眠白河夜船枕を高くする寝溜め・寝つきが悪い・寝苦しい/(2悶絶気絶失神人事不省喪心無意識前後不覚心神喪失気が遠くなる目を回す気を失う

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「昏睡」の意味・わかりやすい解説

昏睡
こんすい

精神的活動および外部刺激に対する脳の反応がいっさい失われる、意識障害のもっとも高度なものをいう。昏睡を含む意識障害の各段階における区別法や名称は、立場や学派によって異なるが、臨床的には通常、目は閉じたままで、筋肉は弛緩(しかん)してまったく動かない、呼びかけや痛みなどの刺激に反応しない、尿や糞便(ふんべん)の失禁がみられるといった生命の危険を伴う重大な神経症状である。

 昏睡状態にあるものは、俗に人事不省(じんじふせい)ともよばれる。

 原因となる病気は数多く、代表的な脳卒中をはじめ、頭部外傷脳炎髄膜炎など脳が直接障害される頭蓋(とうがい)内の疾患と、肝臓病、糖尿病、低血糖、尿毒症、薬物およびガス中毒、重篤な感染症、心臓病、失血などによるショック、肺性脳症子癇(しかん)、ヒステリーなど頭蓋外の疾患とに大別される。なお、重篤な肝不全、糖尿病、低血糖、尿毒症などに伴う意識障害は、厳密な意味の昏睡ではなくても、肝性昏睡、糖尿病性昏睡、低血糖性昏睡、尿毒症性昏睡とよばれる。

[海老原進一郎]

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普及版 字通 「昏睡」の読み・字形・画数・意味

【昏睡】こんすい

眠りこむ。〔梁書、文学下、劉竣伝〕竣、學を好む。~自ら讀書を課し、常にを燎(や)き、夕より旦にす。時に或いは昏睡し、其の髮を(や)く。に覺むれば復(ま)た讀み、夜寐(い)ねず。

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百科事典マイペディア 「昏睡」の意味・わかりやすい解説

昏睡【こんすい】

最高度の意識障害。いかに強い刺激を与えても,精神的反応が全く認められない持続的意識喪失状態。肉体的反応は多少認められることもある。昏睡の身体症状としては筋の弛緩(しかん),反射機能の消失,顔面の蒼白(そうはく)(脳出血では紅潮),瞳孔(どうこう)の散大(時に縮小),尿失禁などがある。昏睡には,半昏睡から深昏睡まで深度に段階があり,客観的な判断基準として適切と言いがたいため,3―3―9度方式の3桁を基準とすることが多い。主要原因は器質的脳疾患と全身の中毒で,前者には脳出血,各種脳炎,脳脊髄膜炎,脳腫瘍(しゅよう)などがあげられ,後者にはアルコール,アヘン,睡眠剤,低酸素状態などの急性中毒や尿毒症,糖尿病などがあげられる。
→関連項目低血糖症脳死判定基準脳低体温療法

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改訂新版 世界大百科事典 「昏睡」の意味・わかりやすい解説

昏睡 (こんすい)
coma

意識障害の程度を表す言葉で,いかなる刺激に対しても反応せず,ただ生命が維持されているのみという深い意識障害をさす。意識障害は,覚醒の程度に応じて,名を呼んだりすると容易に覚醒する傾眠somnolenceから昏蒙obtundation,昏迷stupor,および昏睡に分けられている。
意識
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「昏睡」の意味・わかりやすい解説

昏睡
こんすい
coma

外界の刺激に全然反応せず,反射もほとんど消失した意識障害の最高度のものをいう。けいれんを伴う場合がある。通常,顔面蒼白,瞳孔散大,括約筋弛緩,失禁などの症状がみられる。原因は脳および髄膜の疾患,急性感染症,中毒,重症の糖尿病や腎炎,脳の酸素欠乏などである。原因に即した治療が必要であるが,危篤状態を示す段階であるから,応急処置として安静臥床,強心剤,利尿剤,呼吸興奮剤,水分補給などを考えなければならない。

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栄養・生化学辞典 「昏睡」の解説

昏睡

 脳の疾患,毒物中毒,脳の酸素欠乏などの原因で起こる意識障害.外界の刺激に反応せず,筋肉の弛緩,反射の喪失などが起こる.

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世界大百科事典(旧版)内の昏睡の言及

【意識】より

…したがって意識障害を現象的に記載するにあたっても,この二つの側面を念頭においてなされるのが普通である。 昏睡,昏迷,昏蒙,傾眠などは覚醒の程度を表すものであり,昏睡comaはどのような外界からの刺激に対してもまったく目覚めることのない最も深い意識障害に対して用いられ,傾眠somnolenceは呼びかけないかぎり,目を閉じてうとうととしているが,容易に目を覚まさせることのできるような軽い意識障害を示す。昏蒙benumbingと昏迷stuporはこの二つの中間段階に対して用いられ,通常後者のほうが前者より高度の意識障害を意味するものである。…

【収差】より

…写真レンズでは,この収差の小さいレンズほど画面全体で高い解像力を示すのがふつうなので,球面収差を小さくすることの実用的意味は大きい。(2)コマ収差 単にコマcomaともいう。光軸から少し離れた物点に対し,その像がすい星のような形に広がって,画面中心から放射状に尾を引く現象(図b)。…

【意識】より

…したがって意識障害を現象的に記載するにあたっても,この二つの側面を念頭においてなされるのが普通である。 昏睡,昏迷,昏蒙,傾眠などは覚醒の程度を表すものであり,昏睡comaはどのような外界からの刺激に対してもまったく目覚めることのない最も深い意識障害に対して用いられ,傾眠somnolenceは呼びかけないかぎり,目を閉じてうとうととしているが,容易に目を覚まさせることのできるような軽い意識障害を示す。昏蒙benumbingと昏迷stuporはこの二つの中間段階に対して用いられ,通常後者のほうが前者より高度の意識障害を意味するものである。…

【応急手当】より

…目を開けたり,簡単な命令に応ずるが,ぼんやりしている状態を意識混濁とよぶ。大声で呼んでも反応はないが,強くつねると体の一部を動かす状態を半昏睡という。大声で呼んでも強くつねってもまったく反応しない状態を昏睡とよぶ。…

【糖尿病】より

…(3)糖,タンパク質,脂肪代謝などの広範な異常を招き,とくに血中グルコース(ブドウ糖)の蓄積,停滞が持続する。(4)口の渇き,多飲,多尿,急速な体重減少が生じやすく,重症になると昏睡におちいる。(5)細い小血管が障害されるために,網膜,腎臓,神経が侵されやすく,動脈硬化も促進される。…

※「昏睡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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