日本大百科全書(ニッポニカ) 「野口聡一」の意味・わかりやすい解説
野口聡一
のぐちそういち
(1965― )
宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))所属の宇宙飛行士。神奈川県横浜市生まれ。1989年(平成1)東京大学工学部航空学科卒業、1991年3月同大学大学院工学系研究科航空学専攻修士課程修了。同年4月、石川島播磨(はりま)重工業(現、IHI)株式会社に入社。1996年5月、宇宙開発事業団(NASDA(ナスダ)。現、JAXA)によりミッションスペシャリスト(搭乗運用技術者、MS)候補者に選ばれ、6月NASDAに入社。渡米し、NASA(ナサ)(アメリカ航空宇宙局)のMS訓練コースに参加。1998年4月MS基礎訓練コースを修了し、NASAおよびNASDAからMSに認定された。同年7月よりロシアのガガーリン宇宙飛行士訓練センターの基礎訓練コースに参加。その後国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の開発支援業務に携わった。2005年(平成17)7月、スペースシャトル「ディスカバリー号」にMSとして搭乗。船外活動(EVA)の主担当を務め、ISSのコントロール・モーメント・ジャイロ(姿勢制御装置、CMG)の交換、船外保管プラットフォームの取り付けなどを行った。ISSでEVAを行った初の日本人宇宙飛行士である。さらに2009年12月から2010年6月までISSに滞在し、「きぼう」でロボットアームの子アーム取り付けなどを行い、177日3時間5分の宇宙滞在期間は日本人最長となった。滞在期間中の2010年4月には、ISSの組立てを行うミッションで山崎直子が到着し、日本人宇宙飛行士が初めて軌道上に2人同時滞在してざまざまな共同作業を行った。2012年8月、JAXA宇宙飛行士グループ長に就任。2014年9月には宇宙探検家協会(Association of Space Explorers:ASE)の会長に就任した。2016年3月、JAXA宇宙飛行士グループ長を離任。2016年9月、宇宙探検家協会の会長を離任。2017年11月、第62次・第63次ISS長期滞在クルーのフライトエンジニアに任命される。2019年(令和1)7月、アメリカが開発を進めている有人宇宙船(United States Crew Vehicle:USCV)に搭乗してISSへ向かうための訓練を開始した。2020年3月、東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程修了。2020年11月から2021年5月、クルードラゴン宇宙船運用初号機(Crew-1)に搭乗し、約5か月半、第64次・第65次長期滞在クルーとしてISSに166日間滞在。4度目のEVAや、「きぼう」におけるさまざまなミッションを行う。
[山本将史 2022年4月19日]
『野口聡一・大江麻理子著『野口さん、宇宙ってどんなにおいですか?』(2012・朝日新聞出版)』▽『野口聡一著『オンリーワン――ずっと宇宙に行きたかった』(新潮文庫)』