日本大百科全書(ニッポニカ) 「金冬心」の意味・わかりやすい解説
金冬心
きんとうしん
(1687―1764)
中国、清(しん)代の詩人、書家、画家。名は農。字(あざな)は寿門。冬心はその号であるが、ほかに多くの別号がある。銭塘(せんとう)(浙江(せっこう)省杭州(こうしゅう))の人。初め詩人として名を出し、諸方を歩いて金石文を研究して隷書(れいしょ)や楷書(かいしょ)に特異な作風を生み出し、書家として一家をなした。画(え)は余技で、50歳を過ぎてから描き出したという。晩年にかけて、個性の強い独特の洒脱(しゃだつ)味をもつ画を完成していった。山水、竹、梅、馬、仏像などを描いたが、とくに墨梅が名高い。30代より揚州に遊び、鄭燮(ていしょう)、高翔(こうしょう)、華嵓(かがん)らと交わり、晩年はこの地に住んで、没した。揚州に集まった8人の個性的な画家、いわゆる揚州八怪の第一にあげられる。晩年の弟子に羅聘(らへい)がいる。
[星山晋也]