日本大百科全書(ニッポニカ) 「羅聘」の意味・わかりやすい解説
羅聘
らへい
(1733―1799)
中国、清(しん)代中期の画家。字(あざな)は遯夫(とんふ)、号は両峯(りょうほう)。揚州(ようしゅう)(江蘇(こうそ)省)の人。「揚州八怪」中の最年少者。夢で前世において「花之寺」の主座であったことを知り、「花之寺僧」と号した。金冬心(きんとうしん)の弟子で、金冬心没後その遺集を出版した。羅聘は白昼に魑魅魍魎(ちみもうりょう)を見たといい、一連の「鬼趣図」を描いた。それは乾隆(けんりゅう)の文人たちに愛好され、ほかに道釈、人物、山水、花卉(かき)などもよくした。画(え)には均質な線による白描画的なものから、滲(にじ)みを主とした水墨画風のものまで幅広い技術が駆使されている。代表作『姜白石(きょうはくせき)詩意画冊』(ワシントン、フリーア美術館)は羅聘42歳の作である。このうち「漢川野火図」は冬枯れの原野に燃え盛る野火を描くが、そこに飛び出した真っ黒な兎(うさぎ)との対比がきわめて鮮やかであり、その筆遣いとともに、近代への予感を感じさせるものである。
[近藤秀実]