日本大百科全書(ニッポニカ) 「金剛山観光地区」の意味・わかりやすい解説
金剛山観光地区
くむがんさんかんこうちく
日本海沿いにある景勝地に設置された北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の特殊経済地帯。1998年から韓国人が例外的に北朝鮮を訪問できる地として事業が開始された。韓国の財閥、現代(ヒュンダイ)グループの創業者、鄭周永(チョンジュヨン)(1915―2001)は故郷が金剛山に近いことから、北朝鮮への巨額の観光料支払いと引き換えに金剛山の独占開発権を取得した。開始から10年間で韓国から193万人が訪問し、開城(ケソン)工業団地とともに南北経済協力の象徴であったが、2008年に北朝鮮軍兵士による韓国人観光客射殺事件が発生して韓国人の金剛山観光は中断。2011年には政令により「金剛山国際観光特別区」に改称された。2018年9月の第5回南北首脳会談で観光事業再開に合意。しかし、その後の米朝関係の停滞、南北関係の悪化などを受け、2019年10月には金正恩(キムジョンウン)国務委員長が、韓国によって設置された施設の撤去を指示した。
[礒﨑敦仁 2020年10月16日]