金天沢(読み)きんてんたく(英語表記)Kim Ch'ǒnt'aek

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金天沢」の意味・わかりやすい解説

金天沢
きんてんたく
Kim Ch'ǒnt'aek

朝鮮,李朝後期の時調 (シジョ) 作家,歌人。字,伯涵,履叔。号,南坡。老歌斎金寿長 (1690~?) と並ぶ 18世紀の代表的な平民出身の時調作家で,敬亭山歌壇に同人を結集し,時調に新風を吹込んだ。それまで時調界の主流を占めていた学者文人の時調が,閑情を即興的にうたい,道学的,観念的であるのに比べ,題材を日常生活に求め,描写が写実的で諧謔に富むのが特色となっている。時調の集成にも功績があり,『青丘永言』 (1728) は朝鮮最初の時調集。自作の時調として 74首が現存する。

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世界大百科事典(旧版)内の金天沢の言及

【青丘永言】より

…李朝時代に編まれた朝鮮で最初の時調(短歌)集。英祖朝の第一の歌人,金天沢(号,南坡)が編集。《海東歌謡》とともに李朝時代の歌集としては最も完備したものである。…

【朝鮮文学】より

…郷歌以来の朝鮮固有の歌謡形式を踏襲し短縮した〈時調〉は高麗末に形式が完成するが,李朝の代表的詩歌となった。17世紀末ころまでは学者の即興詩的な色彩が強く,作風も道徳的で観念的であるが,金天沢,金寿長らの平民作家が輩出し,写実的で諧謔的,享楽的になり,形式も短型の〈平時調〉から中・長型の〈オッ時調〉〈辞説時調〉の破格型が生まれた。歌集《青丘永言》《海東歌謡》に集大成されている。…

※「金天沢」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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