…系図では聖徳太子時代の秦河勝(はたのかわかつ)を遠祖とし,現家元まで79代を数えるが,猿楽の家としては,南北朝時代の毘沙王権守(びしやおうごんのかみ)(河勝より53世)あたりを流祖とみてよいであろう。《猿楽縁起》(金春禅竹筆,1468)による金春の家系は,毘沙王権守を秦氏安(村上天皇のころの人)より26代とし,長子光太郎(27代),その子毘沙王次郎(28代)と続き,29代を毘沙王権守の三男金春権守の子,弥三郎が継いでいる。金春権守は観阿弥とほぼ同時代の役者で《昭君》の作者でもあるが,大和猿楽の得意芸である鬼能に長じた長兄光太郎の没後は,円満井座を代表する棟梁の為手(して)であったらしく,金春の座名はその芸名に由来するとみられる。…
…なかでも大和猿楽の四座,近江猿楽六座が名高く,ことに大和の結崎(ゆうざき)座の観阿弥・世阿弥父子によって今日の能の基礎が固められるのである。
[猿楽の役者]
当時の有名な役者たちを挙げると,〈田楽〉の一忠・花夜叉・喜阿弥・高法師(松夜叉)・増阿弥(〈田楽〉も猿楽とさして距離をおかぬものであって,世阿弥伝書にも総合的に論じられている),近江猿楽の犬王(いぬおう),大和猿楽の金春権守(こんぱるごんのかみ)・金剛権守などである。喜阿弥は音曲(謡)の名手,閑寂な能を演じ,世阿弥が少年時代に瞠目(どうもく)して観覧し,のちのちの語りぐさにしたという。…
※「金春権守」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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