金融商品市場指令(読み)きんゆうしょうひんしじょうしれい(英語表記)Markets in Financial Instruments Directive

日本大百科全書(ニッポニカ) 「金融商品市場指令」の意味・わかりやすい解説

金融商品市場指令
きんゆうしょうひんしじょうしれい
Markets in Financial Instruments Directive

ヨーロッパ連合EU)内での金融・資本市場の統一的な競争確保と投資家の保護を目的とする包括的な規制。いわばEU版金融商品取引法であり、アメリカの全米市場システム規制(レギュレーションNMS:Regulation National Market System)と並ぶグローバルスタンダードな金融規制である。英語の頭文字をとって「MiFID(ミフィッド)」ともよばれる。従来の投資サービス指令(ISD:Investment Services Directive、1993年採択)を改正し、2004年に採択、2007年11月からEU各国で順次施行された。その後、リーマン・ショックなどの世界金融危機の教訓を踏まえ、2018年1月には投資家保護ルールや取引の透明性を強化した第2次金融商品市場指令(MiFID2)が施行された。

 MiFIDは金融機関や運用会社などを対象に、域内各国でばらつきのあった規制や許認可統合を目ざした。投資家が域内の国境を越えて投資できるよう求め、証券会社に対する域内単一免許の導入、域内取引所間の健全な競争の促進、域内の投資家保護の仕組みの導入を要請した。第2次金融商品市場指令は正確には、EU加盟国すべての市場に対する共通基準として適用される金融商品市場規則(MiFIR:Markets in Financial Instruments Regulation)とEU各国による国内法制化で効力が生まれる金融商品市場指令(MiFID2)からなる。銀行、資産運用会社、トレーダーに対し、取引データのヨーロッパ証券市場監督局(ESMA:European Securities and Markets Authority)への詳細な報告を義務づけ、株式、債券、商品、デリバティブ金融派生商品)の市場動向を把握し、世界金融危機時に見落としたバブルの芽をみつけだす監督強化の仕組みを盛り込んだ。報告を怠れば、制裁金処分を受ける。投資家保護策を強化するため、資産運用会社に対し投資銀行に払う株式などの売買手数料と、従来手数料に含まれていた調査費用を分けて投資家に開示することを義務づけている。株価暴落などの原因となるコンピュータによる自動売買(アルゴリズム取引)を規制するため、同取引を利用する業者に登録制を導入。取引上限の設定、十分な取引容量の確保、誤発注防止システムの導入なども求めている。

[矢野 武 2018年9月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android