鉄鋼の状態図(読み)てっこうのじょうたいず(その他表記)phase diagram of steel

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鉄鋼の状態図」の意味・わかりやすい解説

鉄鋼の状態図
てっこうのじょうたいず
phase diagram of steel

鉄鋼の変態の様相を図示したもので (→合金の状態図 ) ,鉄鋼の熱処理の重要な指針となるものである。鉄鋼の状態図として最も基本的なものは炭素鋼 (Fe-C 系) の状態図である。この状態図の特徴は,安定な Fe- 黒鉛系と準安定な Fe- Fe3C 系との2つの状態図が重ねて示されていることである。 Fe3C (→セメンタイト ) は準安定相であり,長時間加熱すると Fe 相と黒鉛に分解するが,両者のエネルギー差は小さく,また黒鉛が Fe 中に核発生しにくいため,実用的にはほとんど Fe- Fe3C 系状態図が用いられる。また Fe-C 系に第三元素を添加した場合に状態図がどのように変化するかは,実用的に非常に重要な問題である。 Fe-C 系は変態点が多いので添加元素の状態図へ及ぼす影響は複雑であるが,γ鉄 (→オーステナイト ) 領域の変化から以下の3種に大別される。 (1) γ領域開放型  Ni ,Mn ,Co ,Pt ,Pd などを添加した場合で,添加量が増加するにつれて,γ領域が拡大し室温までγ鉄が安定に存在する。 (2) γ領域拡大型 C ,N ,Cu ,Au などを添加した場合で,添加量の増加に伴いγ領域が拡大するが,室温に達する前にγ相が共析変態を起し,γ領域は閉じる。 (3) γ領域閉鎖型  Al ,Cr ,Mo ,Si ,Ti ,V ,W ,P ,Be などを添加した場合で,添加量の増加に伴いγ領域が閉鎖される形になる。γループ型とも呼ばれる。 (1) と (2) に属する元素はオーステナイトを安定化するものでオーステナイト生成元素と呼び,(3) に属する元素はオーステナイトを不安定化し,フェライトを安定化するため,フェライト生成元素と呼ばれる。

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