阿毘達磨倶舎論(読み)あびだつまくしゃろん(その他表記)Abhidharmakośa

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「阿毘達磨倶舎論」の意味・わかりやすい解説

阿毘達磨倶舎論
あびだつまくしゃろん
Abhidharmakośa

世親著。説一切有部教学を批判的に扱った部派仏教に関する百科全書的著作。「倶舎論」と略称する。4~5世紀頃成立。8章より成り,付録として破我品という1章をもつ。第1,2章で現実世界の要素,第3章に生物的世界,物質的世界,第4章に輪廻の原因である業,第5章に煩悩,第6章に悟りにいたる段階,第7章に悟るための智慧,第8章にその智慧を得るための瞑想を説き,破我品では存在には統一的実体があるとする見解を批判している。部派仏教理解に重要であると同時に大乗仏教の基本的知識を知るうえに大切である。インドチベットモンゴル,中国,日本において大いに研究され,数多くの注釈文献がある。日本では奈良時代にはこの教学が中国から輸入されて倶舎宗という一宗派が成立したが,宗派としてはまもなく消滅した。

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