インドの世親(せしん)バスバンドゥの著した『阿毘達磨倶舎論(あびだつまくしゃろん)』(略して『倶舎論』)を研究する宗派。中国仏教十三宗の一つ。日本の南都六宗の一つ。『倶舎論』は、世親が部派仏教(小乗仏教)の一派説一切有部(せついっさいうぶ)の教学に、経量部(きょうりょうぶ)の立場を取り入れながら著した仏教綱要書である。中国では南北朝時代、部派仏教の論書を研究する毘曇(びどん)宗が成立したが、564年に真諦(しんだい)が『倶舎釈論』22巻を訳すと、その弟子慧愷(えがい)や道岳がこれを研究・注釈するに至って、毘曇宗は倶舎宗にとってかわられた。また654年に玄奘(げんじょう)がふたたび『倶舎論』30巻を訳すと、弟子神泰(じんたい)らが盛んに研究し注釈を施し、普光(ふこう)は『倶舎論記』30巻を、法宝(ほうぼう)は『倶舎論疏(しょ)』30巻を、円暉(えんき)が『倶舎頌疏(じゅしょ)』30巻を著した。
日本へは、玄奘に学び法相(ほっそう)宗を伝えた道昭(どうしょう)(629―700)が初めて伝えた。奈良時代に玄昉(げんぼう)、義淵(ぎえん)らが研究し、奈良の諸大寺に倶舎宗が置かれ、倶舎曼荼羅(まんだら)が描かれた。のちには法相宗の付宗となり、平安初期、最澄(さいちょう)の年分度(ねんぶんど)者の割当てに際しても法相宗の付宗として、1名が毎年得度できることとなった。近世にも鳳潭(ほうたん)、普寂(ふじゃく)らによって研究された。現在、独立した宗派はないが、『倶舎論』は仏教の基礎学として多くの学者が研究している。
[田村晃祐]
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薩婆多(さつばた)宗とも。南都六宗の一つ。世親(せしん)の「倶舎論」によっているので倶舎宗といい,あわせて「六足論」「発智論」「毘婆沙(びばしゃ)論」などを学んだ。入唐して玄奘(げんじょう)に師事した道昭によって661年(斉明7)にもたらされたのが初伝で,さらに智通・智達・玄昉(げんぼう)らによって伝えられた。一宗としての独立性に乏しく,806年(大同元)1月26日の官符では法相(ほっそう)業の年分度者(ねんぶんどしゃ)3人のうち2人に「唯識論」を,1人に「倶舎論」を読ませることとしており,法相宗の付属とされたことがわかる。諸寺の僧侶に考究され,初期には元興寺の護命(ごみょう)・明詮(みょうせん)が知られるが,のち東大寺が倶舎の本拠とされ,良忠・宗性(そうしょう)ら多くの碩学が輩出した。
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