改訂新版 世界大百科事典 「降霊」の意味・わかりやすい解説
降霊 (こうれい)
theurgy
ギリシア語の〈神theos〉と〈行いergon〉の合成語〈神聖な行い〉がその原義。〈交霊〉の訳語をあてることもある。本来はエジプトの新プラトン主義者の間で行われていた,神々や魔霊を呼び出して,意中の思いをかなえてもらったり,霊媒を通じて予言や警告を語らせたり,さまざまの奇跡をあらわさせたりする魔法のことを言った。後に転じて,人間に害をなす〈黒魔術black magic〉と区別して,〈白魔術white magic〉の意に用いられた。近代の降霊術では霊媒のほかに,補助手段として幻灯やこっくりのような器具を用いることもある。18世紀末の黄金=薔薇十字団ライプチヒ支部員シュレープファーJ.G.Schrepferが催した降霊会では,やみのなかに古代の英雄や先王の姿が現れて話をしたが,これは幻灯と腹話術を併用したペテンと判明した。近年では,T.マンの小説《マーリオと魔術師》(1930)のモデルともなった,シュレンク・ノッチング博士による,1922年以降の一連の霊媒実験が高名である。
執筆者:種村 季弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報