霊媒(読み)レイバイ(その他表記)medium

翻訳|medium

デジタル大辞泉 「霊媒」の意味・読み・例文・類語

れい‐ばい【霊媒】

神霊死者の霊と人間との間の意思伝達の仲介をするとされる人。市子いちこ巫女みこ・口寄せなどや心霊術術者の類。
[類語]口寄せ市子占い師易者八卦見手相見陰陽師巫女みこ巫女ふじょいたこゆたかんなぎシャーマン

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精選版 日本国語大辞典 「霊媒」の意味・読み・例文・類語

れい‐ばい【霊媒】

  1. 〘 名詞 〙 神霊や死者の霊がのりうつり、それらに代わって話などをすること。また、その人。霊界と現世の媒介者。巫女・口寄せの類。霊媒者
    1. [初出の実例]「霊媒の語るあの世のありさまを確かなものと信じてゐるわけではありませず」(出典:抒情歌(1932)〈川端康成〉)

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改訂新版 世界大百科事典 「霊媒」の意味・わかりやすい解説

霊媒 (れいばい)
medium

超自然的(霊的)存在と人間とを直接媒介することが可能な人物。個人的,私的にこうした能力をもつ人物と,その能力を利用して呪術・宗教的役割を果たす人物とが存在する。霊媒の特徴は,意図的にみずからを通常意識の変異状態(トランスとかデソシエーションと呼ばれる)に置き,その間に超自然的存在が当人の身体中に入りこみ,人格が超自然格(霊格)に転換するとみられる点にある。したがって霊媒の言動は〈われは某々の神(霊)である〉との第一人称的形式をとるのが常である。霊媒に憑依(ひようい)(憑入)する超自然的存在には,神仏から祖霊,死霊,妖怪,動物霊に至るまで多種あるが,霊媒は憑依した超自然的存在自体としての言動をとるので,憑依霊の種類により異なった行為を示す。現代の研究段階においては,霊媒は予言者や見者などとともに〈シャーマン〉の一類型とみなされている。霊媒は古代から現代に至るまで洋の東西を問わず存在してきた。日本の東北地方のイタコやオカミサマ,各地の行者,祈禱師南西諸島のユタ,カンカカリヤー,諸新宗教の教祖などには霊媒型の人物(職能者)が多い。
執筆者:

超心理学では,死者と交信できる心霊的能力を持つと考えられる人物をいい,物体浮揚等物理的な現象を起こす者を物理的霊媒physical medium,死者とテレパシー的に交信する者を心理的霊媒mental mediumと呼ぶ。霊媒術自体は歴史的にきわめて古いが,通常,霊媒と呼ばれるのは,19世紀中葉アメリカに興った近代心霊主義運動以後の能力者である。霊媒の起こす現象に接する会を交(降)霊会sitting,séanceというが,物理的霊媒では,ごく少数の例外を除くと,暗黒中でのみ交霊会を行う。そのため科学的研究の対象となりにくく,欺術の暴露された者も多いが,信憑性の不明の者も多い。有名な霊媒には,ヒューム(ホーム)Daniel Dunglas Home,パラディーノEusapia Palladino(以上物理的霊媒),パイパーLeonore Piper,ギャレットEileen Garrett(以上心理的霊媒)などがいる。そのうちパラディーノに関しては犯罪学者ロンブローゾらが,パイパーに関しては心理学者W.ジェームズらが,ギャレットに関しては生理学者カレルらが実験的研究を行っている。霊媒を通じて,通常では得られない死者に関する正確な情報が得られても,その由来を解釈する場合,死後生存仮説対立仮説として,実在するあらゆる情報源から超感覚的に関連情報を探し出し利用したとする超ESP仮説があり,死後生存の証明はきわめて難しいとされる。その後1920年代末以降開発された超心理学的方法を通じて,一般人にも心霊的能力が多少なりともあることがわかってから,霊媒という用語は必ずしも本来の意味に限定されなくなった。
心霊学
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「霊媒」の意味・わかりやすい解説

霊媒
れいばい
medium

死者の霊と現世の人との媒介をするとされている人。18世紀中葉、西欧におこった近代心霊主義で用いられるようになった。同様なことばに「サイキック」psychic、「敏感者」sensitiveなどがある。ただし、これらは死者の霊との交流という意味はかならずしも含まず、超常的能力の所有者という意味で用いられる。わが国の沖縄の「ゆた」「のろ」、東北地方の「いたこ」なども死者の霊のことばを伝えるといわれ、巫女(みこ)や巫(かんなぎ)、シャーマニズムでのシャーマンなどは神の意志を伝えるとされている。

 霊媒は交霊会Séanceにおいて、普通、霊媒トランスとよばれる特殊な心的状態に入るといわれ、霊を招いて心霊現象をおこす。霊媒には精神的心霊現象を主とするもの、物理的心霊現象を得意とするものがあり、19世紀末から20世紀初めにかけ西欧において、前者ではアメリカのパイパー夫人Mrs. L. Piper、後者ではイギリスのホームD. D. Home、イタリアのユーサピア・パラディノEusapia Palladinoらが有名である。

 霊媒を用いての研究は、19世紀末から英国心霊研究協会The Society for Psychical Researchを中心に、心霊現象の真偽、人間の死後、個性が存続するか否かの問題について行われたが、確実な結論は得られなかった。アメリカの超心理学者ライン(1895―1980)の研究以来、霊媒を対象とする研究は少なくなったが、近時、超常的能力者を用いての研究が行われるようになってきた。

[大谷宗司]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「霊媒」の意味・わかりやすい解説

霊媒
れいばい
medium

神霊,死霊などの霊的世界と人間との間を交通,媒介し,さらにその他の超自然的心霊現象を起す能力をもつ人間。日本では口寄せとして知られるが,世界各地にもシャーマンなど古くからみられる。霊媒は女性が多く,彼女たちは一種の入神状態 (トランス) に入って,自動言語,自動書記などの心霊活動を行う。欧米では,19世紀になって特に注目を浴び,さまざまな交霊会が催されたが,そこで起る心霊現象は,それを研究対象とした超心理学などの新しい学問を生んだ。

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百科事典マイペディア 「霊媒」の意味・わかりやすい解説

霊媒【れいばい】

英語mediumなどの訳語。超自然的な力で霊界にいる神霊や亡霊に働きかけ,現実の人間と意思を通じさせるための媒介をするとされる人物。文化人類学上はシャーマンの一類型,超心理学上は死者との交信が可能な霊能者をいう。

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デジタル大辞泉プラス 「霊媒」の解説

霊媒

アメリカの作曲家ジャン・カルロ・メノッティの英語による全2幕のオペラ(1946)。原題《The Medium》。偽者の女霊媒師を描いた悲劇。

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世界大百科事典(旧版)内の霊媒の言及

【エクトプラズム】より

…フランスの生理学者C.R.リシェ(1913年ノーベル賞受賞)の造語で,霊媒の体から,交霊会の際に放出される正体不明の物質。サイコプラズムpsychoplasm,テレプラズムteleplasmともいう。…

【降霊】より

…〈交霊〉の訳語をあてることもある。本来はエジプトの新プラトン主義者の間で行われていた,神々や魔霊を呼び出して,意中の思いをかなえてもらったり,霊媒を通じて予言や警告を語らせたり,さまざまの奇跡をあらわさせたりする魔法のことを言った。後に転じて,人間に害をなす〈黒魔術black magic〉と区別して,〈白魔術white magic〉の意に用いられた。…

【コミュニケーション】より

…謝意の贈物,身ぶり,音声,あるいは文字などの事物的パターンを媒介にして表出されるほかない。これらの媒体がメディアmediaであり,この語は人間と神との媒介者である霊媒の英語名medium,さらにその複数形のmediaに由来する。現代では,身ぶりや音声ばかりでなく,文字とさらにその担体である印刷物や電波など,その幅はきわめて広くなっており,そのうち新聞,雑誌,ラジオ,テレビなど,マス・コミュニケーションの媒体をマス・メディアという。…

【シャマニズム】より


[種類]
 シャーマンは超自然的存在との直接接触・交流の仕方における特徴から,いくつかに区分される。神霊・精霊がシャーマンに憑入し,人格が霊格化して直接話法で言動するのは〈霊媒〉,シャーマンが神霊・精霊の姿を目にし,声を耳にして間接話法でふるまうのが〈予言者〉,ろうそくや線香の燃えぐあいなどに神意を読みとるのが〈見者〉であるとされる。いずれにせよ,その前提には神・人の直接交流の事実があり,通常,意識・心理の変異が見られる点で共通している。…

【心霊学】より

…これらの事件が近代心霊主義勃興の端緒となり,それ以後急速に,死後生存を信ずる運動が全米,次いでヨーロッパ各地に広まった。近代心霊主義とは,〈霊界にある者と,霊媒術を通じて行う通信により明らかにされる事実に基づく,死後生存の科学であり哲学であり宗教〉であって,さまざまな宗教に共通する古来の霊的世界観を出発点とするものではない。ハイズビル事件とは,この村の一家の2人の娘(フォックス姉妹)が,その家で以前殺害された人物の霊と,叩音(こうおん)を通じて交信することに成功したといわれる,ポルターガイスト現象類似の出来事である。…

※「霊媒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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