内科学 第10版 「限局性結節性過形成」の解説
限局性結節性過形成(肝原発性良性腫瘍)
定義・概念
WHO分類では腫瘍類似病変に分類され,20~50歳の女性で非硬変肝に表在性に単発し,長経5 cm以下の腫瘤としてみられる.病理学的特徴は中心に膠原線維からなる星芒状瘢痕(central scar)があり,周辺に向かう放射状の線維性隔壁により粗大結節性に区分されていることである.組織学的には細胞に異型性はなく,中心の瘢痕部には異常な壁肥厚を示す血管,炎症性細胞浸潤を伴う小胆管の増生をみる.臨床的には無症状である.限局性結節性過形成は肝の新生物というよりは過誤腫ないし血管奇形とそれに伴った反応性の病変と考えられる.肝細胞腺腫と異なって,経口避妊薬の服用は原因とならないとする考え方が最近では一般的である.
疫学
肝細胞腺腫と比較すると日本では圧倒的に高頻度である.
検査所見
画像診断上,超音波検査では,比較的周囲肝実質に近い低~等エコーを示し,中央部に星芒状瘢痕を疑わせる低エコー域を示すこともある.単純CTでは結節状の低~等濃度域のことが多く,造影CTでは早期で高濃度域,後期で等濃度域を示し,中心部に星芒状瘢痕に一致して低濃度域がみられる.MRIではT1強調像でほぼ等信号,T2強調像で等信号からやや高信号を示すことが多い.Kupffer細胞を有するため,SPIO-MRIやソナゾイドを用いた造影超音波Kupffer相では腫瘤内に造影剤が取り込まれ,周囲肝と等信号となる.血管造影では境界明瞭な血流に富んだ腫瘤(hypervasccular nodule)として描出され,屈曲・拡張した栄養動脈が腫瘍内部に入り込み,末梢に向かう車軸状血管(spoke wheel appearance)を認めることが特徴である.造影超音波検査では,動脈相で腫瘍の中心に血流を認め,急速に腫瘤辺縁に向かって染まりKupffer相では取り込みがみられるという特徴的所見を呈する.
診断
正常肝で各種画像で車軸状構築を認める多血性腫瘍が検出され,Kupffer細胞の存在がソナゾイド造影エコーで確認されれば,本症の診断は困難ではない.
治療
以前は肝細胞癌との鑑別が問題となっていたが,最近では確定診断されることが多い.確定診断がされれば治療は不要である.[工藤正俊]
■文献
Kojiro M, Wanless IR, et al: The International Consensus Group for Hepatocellular Neoplasia:Pathologic diagnosis of early hepatocellular carcinoma: a report of the international consensus group for hepatocellular neoplasia. Hepatology, 49: 658-664, 2009.
Makuuchi M, Kokudo N, et al: Development of evidence-based clinical guidelines for the diagnosis and treatment of hepatocellular carcinoma in Japan. Hepatol Res, 38: 37-51, 2008.
Kudo M, Izumi N, et al: Management of hepatocellular carcinoma in Japan: Consensus-Based Clinical Practice Guidelines proposed by the Japan Society of Hepatology (JSH) 2010 updated version. Digest Dis, 29: 339-364, 2011.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報