肝細胞腺腫

内科学 第10版 「肝細胞腺腫」の解説

肝細胞腺腫(肝原発性良性腫瘍)

(2)肝細胞腺腫(hepatocellular adenoma)
定義・概念
 まれな良性上皮性腫瘍で,正常肝細胞と類似した細胞からなり非硬変肝に発生する.20~40歳の女性に多く,女性では経口避妊薬,男性では蛋白同化ホルモンの長期服用に関連している.病理学的には,正常肝に発生し,多くは単発性で,比較的柔らかい.腫瘍径は1 cm前後から30 cmに及ぶ.割面は淡赤褐色~灰白色でほぼ均一な性状を示し,周囲肝組織との境界は明瞭で,大きな腺腫は薄い線維性被膜を有する.腫瘍内には門脈や胆管はなく,部分的に壊死あるいは出血巣などを認めることが多い.
原因・病因
 経口避妊薬の服用との密接な関係や1型糖原病(von Gierke病)に合併することが報告されている.
疫学
 日本ではきわめて少ないが,欧米では比較的多い.
診断
 腫瘍内や腫瘍の破裂による腹腔内出血とそれに伴う腹痛で発見されることが少なくない. 腫瘍内出血のない場合は,超音波では内部均一な高エコー,造影CTや血管造影では均一はhypervascularな病変として描出される.腫瘍割面像は比較的均一で,線維性被膜を認めない. しかし,腫瘍内出血のある場合は,単純CTで高吸収域,MRIのT1強調像で高信号を呈する.若い女性で,しかもB型・C型の肝炎ウイルスが陰性で正常肝に発生した場合は,本疾患の可能性を考慮する.
鑑別診断
 肝細胞癌および,肝限局性結節性過形成,もしくは血管筋脂肪腫などと鑑別を要する場合がある.特に肝細胞癌との鑑別は画像診断上は不可能である.
治療
 経口避妊薬,あるいは蛋白同化ホルモンを服用している場合は中止させ,腫瘍出血がみられる場合は緊急外科的切除適応となる.悪性転化のサブタイプも存在するとされているため,生検にて肝細胞腺腫と診断されれば自然腫瘍破裂のリスクもあるため,基本的には切除の対象である.[工藤正俊]
■文献
Kojiro M, Wanless IR, et al: The International Consensus Group for Hepatocellular Neoplasia:Pathologic diagnosis of early hepatocellular carcinoma: a report of the international consensus group for hepatocellular neoplasia. Hepatology, 49: 658-664, 2009.
Makuuchi M, Kokudo N, et al: Development of evidence-based clinical guidelines for the diagnosis and treatment of hepatocellular carcinoma in Japan. Hepatol Res, 38: 37-51, 2008.
Kudo M, Izumi N, et al: Management of hepatocellular carcinoma in Japan: Consensus-Based Clinical Practice Guidelines proposed by the Japan Society of Hepatology (JSH) 2010 updated version. Digest Dis, 29: 339-364, 2011.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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