翻訳|echo
本来は反響、木霊(こだま)、山彦(やまびこ)などを意味しているが、科学的には音波や電波のような波動が、物体に当たって反射し、発信点(またはその近傍)まで戻ってきたとき、その反射波をエコーという。エコーは、反射体の性質や状態に関する情報をもって戻ってくるので、この原理を利用し、離れた物体を探知するための各種の装置が考案され実用されている。たとえば、波源に超音波を用いたソナーといわれる魚群探知機や海底測深機、金属内部を調べる探傷器、人体の内部臓器を診察する超音波診断装置などがある。また波源に電波を用いた気象レーダー、船舶レーダー、航空監視レーダーなど各種レーダー、および電波高度計、スピードガンなどもある。
また通信分野では、希望する信号(通常は最短の経路を通って到達する信号)とは別の経路を通って受信端に到達し、希望信号より時間的に遅れて受信され、その結果受信信号にひずみを生じて、通信の品質を劣化させる原因となる遅延信号成分を表す意味にも用いられる。たとえば、電離層と地表との間で反射を繰り返しながら伝わる短波の通信において、送受信点を結ぶ大円通路を経由した正規信号と同時に、大円の反対部分を経由した遅延信号の受信されることがあり、これを地球裏回りエコーという。また有線通信において、介在する線路または回路に、特性の不整合があって反射が生じたり、信号の漏洩(ろうえい)があって意図しない経路に信号電流が流れたりすると、エコーが発生し、通信の妨げとなる。これらエコーを防ぐには、その発生原因や性質などに応じた対策を講ずる必要がある。現在では種々のエコーサプレッサー(抑圧装置)や、より性能の優れたエコーキャンセラー(消去装置)が開発され利用されている。
ちなみに、アメリカでは1960年の初めに、エコー衛星という風船状(直径約30メートル)の人工衛星を打ち上げ、地上からの電波を反射中継する通信実験に成功して、現在の宇宙通信時代の幕開けを飾った。
[若井 登]
ギリシア神話の森と泉のニンフ。「こだま」の擬人化。彼女をめぐる伝承には2種類あり、有名なのはナルキッソスとの悲恋譚(たん)である。あるときエコーは、ゼウスが恋人と戯れている間中ずっとおしゃべりをして、ゼウスの正妻ヘラの注意をそらしていた。しかし、その策略はたちまち見破られ、彼女はヘラによりこだまにされてしまった。そのため、恋人ナルキッソスとのあいびきのときも、ナルキッソスが話すことばのおしまいの部分をただむなしく繰り返すだけとなり、恋は破れた。ついには、彼女は悲しみにやつれ果て、山々に響く声のみが残った。
いま一つの伝承は、牧神パンがエコーに恋したが、その愛を彼女が受け入れなかったために、怒ったパンは仕返しとして羊飼いを狂わせ、彼女を八つ裂きにさせたという。そしてエコーの体は大地にばらまかれ、その声も至る所に飛び散ったという。
[小川正広]
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…エコーはギリシア神話の森のニンフの名に由来し,本来は山彦のことである。室内音響では,これを反響と名付け,音源から直接に到来した音波に対し,それと聴感上区別できるような時間遅れをもつ反射音波をいう。…
…エコーともいう。残響と同じ意味で用いられることもあるが,音響学的には継続時間の短い音を出したとき,その反射音が直接音と時間的に分離して1回または繰り返して多数回聞こえる現象をいう。…
…大気中を伝わる音波が固体面によって反射され,音源の方向に戻って来る現象。こだま,エコーともいう。一般には野外で音波が山体,崖,木立,家屋など大規模な地物で反射して来る場合にいい,室内で起こる同種の現象は反響(場合によっては残響)と呼ぶ。…
…人工衛星を中継局として用いるアイデアは,作家のA.クラークが静止衛星軌道の利用として早くから予言していた。しかしこれはロケットや衛星技術が進歩するまでは実現せず,最初の通信衛星には,約1500kmの高度の軌道で,地上から送った電波を反射して別の地点で受信をする原理のエコー衛星が試みられた。これにややおくれて,通信を中継する機能をもった衛星が作られ,地上からの電波を人工衛星が受信して,これを増幅して地上の受信局に送信するものが出てきた。…
…大気中を伝わる音波が固体面によって反射され,音源の方向に戻って来る現象。こだま,エコーともいう。一般には野外で音波が山体,崖,木立,家屋など大規模な地物で反射して来る場合にいい,室内で起こる同種の現象は反響(場合によっては残響)と呼ぶ。…
※「エコー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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