エコー(読み)えこー(英語表記)echo

翻訳|echo

デジタル大辞泉 「エコー」の意味・読み・例文・類語

エコー(echo)

[名](スル)
こだま。山びこ。
残響。「エコーを効かせた録音」
エコー検査」の略。
レーダー音響測深などにおける、対象物からの電波または音の反射波
[補説]曲名別項。→エコー

エコー(Ēchō)

ギリシャ神話の森のニンフ。女神ヘラに憎まれ、他人の言葉をそのまま返すことしかできなくなり、美青年ナルキッソスに失恋し、やつれて声だけになった。

エコー【Echo】[曲名]

ハイドン交響曲第38番ハ長調の通称。1769年作曲。第2楽章で第1バイオリンと第2バイオリンによる、エコーのような掛け合いが現れる。こだま。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「エコー」の意味・読み・例文・類語

エコー

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] echo )
  2. こだま。やまびこ。〔外来語辞典(1914)〕
  3. ある発音体から出た音が壁面で反射し、発音体の音が無くなっても残る響きのこと。残響。特に、エコーマシンで人工的に作られた残響。
    1. [初出の実例]「りっぱに機械的にエコーが出るようになりました」(出典:NHK放送楽屋ばなし(1951)〈藤井一市〉二)
  4. エコーけんさ(━検査)」、「エコーマシン」の略。

エコー

  1. ( [ギリシア語] Ēkhō ) ギリシア神話のニンフ。ヘラの怒りを買って他人のことばを繰り返すことしかできなくなる。ナルキッソスに恋したがその愛を告げられず、苦悩の果てに声だけ残り、こだまになったという。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エコー」の意味・わかりやすい解説

エコー(反射波)
えこー
echo

本来は反響、木霊(こだま)、山彦(やまびこ)などを意味しているが、科学的には音波や電波のような波動が、物体に当たって反射し、発信点(またはその近傍)まで戻ってきたとき、その反射波をエコーという。エコーは、反射体の性質や状態に関する情報をもって戻ってくるので、この原理を利用し、離れた物体を探知するための各種の装置が考案され実用されている。たとえば、波源に超音波を用いたソナーといわれる魚群探知機や海底測深機、金属内部を調べる探傷器、人体の内部臓器を診察する超音波診断装置などがある。また波源に電波を用いた気象レーダー、船舶レーダー、航空監視レーダーなど各種レーダー、および電波高度計、スピードガンなどもある。

 また通信分野では、希望する信号(通常は最短の経路を通って到達する信号)とは別の経路を通って受信端に到達し、希望信号より時間的に遅れて受信され、その結果受信信号にひずみを生じて、通信の品質を劣化させる原因となる遅延信号成分を表す意味にも用いられる。たとえば、電離層と地表との間で反射を繰り返しながら伝わる短波の通信において、送受信点を結ぶ大円通路を経由した正規信号と同時に、大円の反対部分を経由した遅延信号の受信されることがあり、これを地球裏回りエコーという。また有線通信において、介在する線路または回路に、特性の不整合があって反射が生じたり、信号の漏洩(ろうえい)があって意図しない経路に信号電流が流れたりすると、エコーが発生し、通信の妨げとなる。これらエコーを防ぐには、その発生原因や性質などに応じた対策を講ずる必要がある。現在では種々のエコーサプレッサー(抑圧装置)や、より性能の優れたエコーキャンセラー(消去装置)が開発され利用されている。

 ちなみに、アメリカでは1960年の初めに、エコー衛星という風船状(直径約30メートル)の人工衛星を打ち上げ、地上からの電波を反射中継する通信実験に成功して、現在の宇宙通信時代の幕開けを飾った。

[若井 登]


エコー(ギリシア神話)
えこー
Ēchō

ギリシア神話の森と泉のニンフ。「こだま」の擬人化。彼女をめぐる伝承には2種類あり、有名なのはナルキッソスとの悲恋譚(たん)である。あるときエコーは、ゼウスが恋人と戯れている間中ずっとおしゃべりをして、ゼウスの正妻ヘラの注意をそらしていた。しかし、その策略はたちまち見破られ、彼女はヘラによりこだまにされてしまった。そのため、恋人ナルキッソスとのあいびきのときも、ナルキッソスが話すことばのおしまいの部分をただむなしく繰り返すだけとなり、恋は破れた。ついには、彼女は悲しみにやつれ果て、山々に響く声のみが残った。

 いま一つの伝承は、牧神パンがエコーに恋したが、その愛を彼女が受け入れなかったために、怒ったパンは仕返しとして羊飼いを狂わせ、彼女を八つ裂きにさせたという。そしてエコーの体は大地にばらまかれ、その声も至る所に飛び散ったという。

[小川正広]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「エコー」の意味・わかりやすい解説

エコー
Ēchō

ギリシア神話の森のニンフ。その名は〈山彦〉の意。オウィディウスの《転身物語》によれば,彼女は女神ヘラが夫ゼウスの浮気の現場を押さえるのを何度も妨害したため,ヘラによってみずから発言する能力を奪われ,耳にした他人のことばを繰り返すだけの身にされた。その後,彼女は美少年ナルキッソスに恋したが,顧みられなかったので,憔悴(しようすい)のあまり身はやせ細り,ついには声だけになったという。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「エコー」の意味・わかりやすい解説

エコー

ギリシア神話の森のニンフ。〈こだま〉〈山彦〉の意。女神ヘラによって発話能力を奪われ,他人のことばを繰り返すだけの身にされたのち,美少年ナルキッソスに失恋し憔悴(しょうすい)して姿がうせ,声のみ残ったという。
→関連項目転身物語ニンフ

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エコー」の意味・わかりやすい解説

エコー
Echō

ギリシア神話のこだまの女精。もとは森に住むニンフだったが,おしゃべりだったためヘラの怒りを買い,他人の言葉を繰返すだけで,自分からは何も話しかけることができないようにされてしまった。そのためやがて美男子ナルキッソスに恋した彼女は,胸の思いを彼に何も伝えることができずに捨てられ,悲しみのあまりやせ細って,しまいに身体のない声だけの存在になってしまったという。

エコー
Project Echo

アメリカが 1960,64年に打上げた気球型の人工衛星。アルミニウムの薄膜でおおわれたプラスチックの気球を折りたたんで打上げ,軌道に乗ってからふくらませて,地上から発射された超短波を反射する。受動型の通信実験に用いられた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

PET検査用語集 「エコー」の解説

エコー

「超音波検査」とも呼ばれます。弱い超音波を体に当てて、臓器や組織にぶつかってできる反射波を画像化することによって診断します。放射線を使わないので、人体に無害で、検査中も刺激を感じることの少ない検査方法です。

出典 PET検査ネットPET検査用語集について 情報

デジタル大辞泉プラス 「エコー」の解説

エコー〔曲名〕

オーストリアの作曲家ヨーゼフ・ハイドンの交響曲第38番(1769頃)。原題《Echo》。名称は第2楽章で第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンの間にこだま(エコー)のようなフレーズが現れることに由来する。

エコー〔タバコ〕

JTが製造、販売するタバコのブランド、また、その商品名。1968年8月、販売開始。タール15mg、ニコチン1.0mg、20本入り。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

音楽用語ダス 「エコー」の解説

エコー[echo]

音源から直接人の耳に届いた音を直接音といい、反対に壁などに一度以上反射して、遅れて耳に届く音を反射音という。この反射音を総称してエコーという。

出典 (株)ヤマハミュージックメディア音楽用語ダスについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のエコーの言及

【エコー装置】より

エコーはギリシア神話の森のニンフの名に由来し,本来は山彦のことである。室内音響では,これを反響と名付け,音源から直接に到来した音波に対し,それと聴感上区別できるような時間遅れをもつ反射音波をいう。…

【反響】より

…エコーともいう。残響と同じ意味で用いられることもあるが,音響学的には継続時間の短い音を出したとき,その反射音が直接音と時間的に分離して1回または繰り返して多数回聞こえる現象をいう。…

【山彦】より

…大気中を伝わる音波が固体面によって反射され,音源の方向に戻って来る現象。こだま,エコーともいう。一般には野外で音波が山体,崖,木立,家屋など大規模な地物で反射して来る場合にいい,室内で起こる同種の現象は反響(場合によっては残響)と呼ぶ。…

【宇宙開発】より

…人工衛星を中継局として用いるアイデアは,作家のA.クラークが静止衛星軌道の利用として早くから予言していた。しかしこれはロケットや衛星技術が進歩するまでは実現せず,最初の通信衛星には,約1500kmの高度の軌道で,地上から送った電波を反射して別の地点で受信をする原理のエコー衛星が試みられた。これにややおくれて,通信を中継する機能をもった衛星が作られ,地上からの電波を人工衛星が受信して,これを増幅して地上の受信局に送信するものが出てきた。…

【山彦】より

…大気中を伝わる音波が固体面によって反射され,音源の方向に戻って来る現象。こだま,エコーともいう。一般には野外で音波が山体,崖,木立,家屋など大規模な地物で反射して来る場合にいい,室内で起こる同種の現象は反響(場合によっては残響)と呼ぶ。…

※「エコー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android