改訂新版 世界大百科事典 「陳暘楽書」の意味・わかりやすい解説
陳暘楽書 (ちんようがくしょ)
Chén yáng yuè shū
北宋の陳暘の書。全200巻。1101年(建中靖国1)徽宗に献上されたが,出版されたのは99年(慶元5)だったという。ふつうには《楽書》で知られる。内容は音楽,演劇,舞踏,曲芸,式典などにわたる。四書五経などの文を引き解釈を加えた訓義篇の前半と,図を多く入れて楽理,楽器,楽隊舞隊の配列を示した楽図論の後半とからなる。論調は音域をオクターブ以下,音階は半音なしの5音音階を主張するなど保守的で俗楽,胡楽の流行音楽を否定した。しかし後半には雅部のほか俗部,胡部をおのおの設け,楽器,歌唱,舞楽について各項を独立して論じており,北宋当時のみならず唐以前の楽舞,演劇,古楽器の類を知る貴重な資料として後代諸書によく引用される。なお胡部には倭国,日本などと,日本に関する記事もみえる。
執筆者:吉川 良和
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報