日本大百科全書(ニッポニカ) 「陵墓古墳」の意味・わかりやすい解説
陵墓古墳
りょうぼこふん
宮内庁によって陵、墓、陵墓参考地、陪塚(ばいづか)とされている古墳の総称であり、特別の古墳のことではない。陵とは、歴代天皇陵、歴代外天皇陵、皇后陵、太皇大后(たいこうたいごう)陵をいい、墓とは皇子、皇女墓をいう。これらは特定の人物の墳墓とされ、崩年を基準とした式年祭祀(さいし)がある。陵墓参考地とは陵、墓の可能性のある古墳である。これらの古墳に付属するものを陪塚とよんでいる。
現在、これら陵、墓、陵墓参考地、陪塚とされている古墳の総数は240に及び(奈良、大阪、京都など2府15県に分布する)、宮内庁によって管理されている。このなかには近畿の巨大古墳の9割が含まれているが、研究者、国民が墳丘に立ち入ることができず、研究対象外とされ、古墳研究の進歩を大きく阻んでいる。天皇陵は1890年(明治23)までに決定され、陵墓参考地はそれ以降1940年代までに決定されたが、その比定は、実在したとすれば6世紀前半の人である継体(けいたい)天皇皇后手白香(たしらか)皇后陵に4世紀前半の西殿塚(にしとのづか)古墳(奈良県天理市)をあてるなど矛盾が著しい。
[今井 尭]
『原島礼二・今井尭他著『巨大古墳と倭の五王』(1981・青木書店)』▽『森浩一著『巨大古墳の世紀』(岩波新書)』▽『石部正志・宮川捗「『天皇陵』と考古学」(『岩波講座日本考古学7 現代と考古学』所収、1986・岩波書店)』