改訂新版 世界大百科事典 「陵戸守戸」の意味・わかりやすい解説
陵戸・守戸 (りょうこしゅこ)
日本の古代において,治部省所属の諸陵司(のち寮)により陵墓の保守に使役された賤民。唐の太常寺所属の諸陵署に配されて山陵の守衛,築造,修理に当たった陵戸の制を模して,令制前において陵墓の造営,保守をつかさどる土師(はじ)氏に管掌されていた部民を陵戸となした。唐の陵戸は賤民であったが,のち職業はそのままに解放されて良民とされた。日本の陵戸は大宝令制では賤民でなかったらしいが,養老令制では戸令で5種の賤民の一つとされている。しかし奴隷ではなく,身分は雑戸(ざつこ)に準じている。口分田(陵戸田)を給され,家族をなし,課役を免ぜられ,陵戸籍に付されていた。691年(持統5)陵に5戸,墓に3戸を充て,不足の場合は良民を仮陵戸(守戸)とする原則が定められた。大宝令の別記には,陵戸84戸(倭国37戸,川内国37戸,津国5戸,山代国5戸),借陵戸150戸(藤原京25戸,倭国58戸,川内国57戸,山代国3戸,伊勢国3戸,紀伊国3戸)が定められ,《延喜式》には陵戸97戸,守戸267戸,守丁7人が見える。陵戸のうち,陵に充てられたのを陵戸・陵守,墓に充てられたのを墓戸・墓守と称した。
→諸陵寮 →陵墓
執筆者:石上 英一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報