陵戸(読み)リョウコ

デジタル大辞泉 「陵戸」の意味・読み・例文・類語

りょう‐こ【陵戸】

律令制下の賤民せんみんの一。天皇皇族陵墓を守ることを世襲的な任とした。

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精選版 日本国語大辞典 「陵戸」の意味・読み・例文・類語

りょう‐こ【陵戸】

  1. 〘 名詞 〙 天子の墓を守るもの。日本では、古代賤民の一つ。天皇・皇后・皇族の陵墓を守衛する陵守・墓守を出す戸。令制では治部省諸陵司(のちに昇格して諸陵寮となる)に属した。
    1. [初出の実例]「凡雑戸。陵戸犯流者。近流決杖一百。一加卅。留往倶三年」(出典:律(718)名例)
    2. [その他の文献]〔魏書‐景穆十二王伝・任城王順〕

みささぎ‐べ【陵戸】

  1. 〘 名詞 〙 天皇のみささぎを守護する者。令制以前からあり、令制では諸陵司(後に寮となる)の監督下にあった。りょうこ。
    1. [初出の実例]「加戮(ころ)さしめたまふに忍びずして、陵戸に充て、兼ねて山を守らしむ」(出典:日本書紀(720)顕宗元年五月)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「陵戸」の意味・わかりやすい解説

陵戸
りょうこ

古代に陵墓守衛にあてられた戸。大王(おおきみ)陵と大后(おおきさき)・王子らの墓それぞれを守衛した陵守(みささぎもり)と墓守(はかもり)を前身とし、691年(持統天皇5)の詔(みことのり)に初見。757年(天平宝字1)施行の養老令に初めて五色(ごしき)の賤(せん)の一つとされ、喪葬令(そうそうりょう)に陵を守るという職務が明文化、同職員令(しきいんりょう)に治部省(じぶしょう)諸陵司(しょりょうし)の管轄下に隷属し、陵戸籍に付すこと、同賦役令(ぶやくりょう)に課役(かえき)免除が規定された。また、同戸令(こりょう)では当色婚(とうじきこん)が強制された。同田令(でんりょう)に官戸官奴婢(かんぬひ)の口分田(くぶんでん)は良民同額とあるので、陵戸にもこれが適用されたと思われる。陵戸が不足の場合、近隣の百姓(ひゃくせい)を指定して3年交代で守衛させたのが、守戸(しゅこ)である。

門脇禎二]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「陵戸」の意味・わかりやすい解説

陵戸
りょうこ

令制における賤民の一つ。天皇,后妃,皇親の陵墓の番人。賤民のなかでは良民に近く,良民と同額の口分田を支給され,調・雑徭を免除されたが,良民との通婚は許されず,戸籍は本籍地以外にも,別に1通を作成して,治部省管下の諸陵司で保管した。「別記 (べっき) 」によれば,常陵守 (陵戸) ・墓守は 84戸で,倭 (やまと) ・河内各 37戸,津・山代各5戸。また借陵守 (陵墓近在の良民) ・墓守は 150戸で,京 25戸,倭 58戸,河内 57戸,山代・伊勢・紀伊各3戸があった。ほかに陵守長・陵預 (りょうのあずかり) もおいた。 (→五色の賤 ,  )

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旺文社日本史事典 三訂版 「陵戸」の解説

陵戸
りょうこ

律令制下,五色の賤の一つ
天皇・皇后の陵墓を守ることを世襲とした賤民。身分的には良民に近く,同額の口分田も与えられたが,課役は免除された。死者を忌む風習から賤民視された。

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普及版 字通 「陵戸」の読み・字形・画数・意味

【陵戸】りようこ

守陵の家。

字通「陵」の項目を見る

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「陵戸」の解説

陵戸
りょうこ

五色の賤(ごしきのせん)

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世界大百科事典(旧版)内の陵戸の言及

【賤民】より

…7世紀までの賤民の形成は,(1)犯罪による没身(賤民にすること),(2)人身売買・債務による奴隷化,(3)捕虜の賤民化,(4)手工業者などの賤民化,(5)王族・豪族・寺社の隷属民の賤民化,などにより進行していた。養老令の戸令は,官有賤民として陵墓を保守する陵戸(りようこ)(陵戸・守戸),朝廷で労役に従う官戸(かんこ)と公奴婢(ぬひ)(官奴婢),私有賤民として家人(けにん)と私奴婢の合わせて5種の賤民の身分を定めた(陵戸は大宝令では賤民ではなかったとの説もある)。陵戸は奴隷ではないが,官戸,公奴婢,家人,私奴婢は奴隷であった。…

【律令制】より

…良賤間の通婚は禁ぜられ,その所生子は原則として賤とされる定めであった(良賤法)。養老令の規定では,賤民に陵戸(りようこ),官戸(かんこ),家人(けにん),官奴婢(ぬひ)(公奴婢),私奴婢の5種があり(五色の賤),それぞれ同一身分内部で婚姻しなければならないという当色婚の制度が定められていたが,このうち陵戸は大宝令では雑戸(ざつこ)の一種としてまだ賤とはされていなかった可能性が強い。雑戸は品部(しなべ)とともに前代の部民(べみん)の一部が律令制下になお再編・存続させられ,それぞれ特定の官司に隷属して特殊な労役に従事させられたもので,そのため身分上は良民でありながら,社会的に一般公民とは異なる卑賤な存在として意識された。…

※「陵戸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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